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トップページ > インタビュー > 『携帯彼氏』船曳真珠監督 単独インタビュー

船曳真珠監督 単独インタビュー

2009-10-27 更新

まずは、観客に見てもらえるような映画を作りたいというのが一番にあります

携帯彼氏

船曳真珠監督

1982年生まれ。2000年に東京大学に入学し、続けて映画美学校と東京藝術大学大学院映像研究科に入学。自主映画『山谷無宿』(2000)が映画祭でグランプリを受賞。07年にはオムニバス映画『夢十夜・海賊版』の一編『第五夜』、08年には『夕映え少女』の一編『夕映え少女』を監督し、話題を呼ぶ。また映画芸術誌などに映画評論も寄稿している。


共同配給:GONZO・シナジー
10月24日(土)より新宿ピカデリーほか全国ロードショー!
http://k-kare.jp

 若手女優注目株ナンバーワン、川島海荷の初主演作『携帯彼氏』が公開される。携帯電話の機能を上手く取り込んだサスペンスホラーのメガホンを取ったのは、本作が長編初監督となる船曳真珠。目下映画業界で大きな注目を集めている芸大大学院出身の新人監督に、監督デビューまでの道筋を聞いた。


中学の頃から映画監督を目指していたそうですが、きっかけとなった作品は?

 黒澤明監督の『七人の侍』とフェデリコ・フェリーニの『道』です。『七人の侍』は、小学校高学年の時、ちょうどリバイバル上映をやっていたので映画館で観ました。もともとテレビっ子だったので映像を観るのは大好きでしたが、この2本の映画は白黒で自分の生きている世界とは全くかけ離れているのに、スクリーンに登場する人たちの生き様に引き込まれました。これはすごいことだなと子供心に思い、そこから映画に引き込まれてずっと観ている内に、自分でも撮れたら良いなと思うようになりました。

自主映画は撮られましたか?

 映画という形では大学に入ってからですが、中学や高校の頃は家庭用の8mmビデオカメラで自分の身辺雑記みたいな感じで撮りました。

東京大学、映画美学校、芸大大学院とずいぶんいろいろなところで勉強をされていますね?

 東京大学には、高校までとは違ったいろいろな勉強をしたいと入って。映画は元々やりたかったので映画サークルがあると良いなと思って調べたら、東京大学映画研究会というのがありました。そこで作っている映画をネットで観たのですが、すごくばかばかしくて面白かったので、「あっ、ここで映画を作りたいな」と思いました。大学に入ってからサークルの仲間内で映画を作っている間に、外の眼が欲しいな、外の人からはどういう風に見えるだろうと思うようになり、映画美学校というところでちょっと揉まれてみようかなと(笑)。そこで、大学在学中から映画美学校にダブル・スクールみたいな感じで通い始めましたが、これはとても大きな経験になったと思います。大学卒業後も映画の学校に行きたいと思っていたのですが、ちょうど大学在学中に東京芸術大学大学院の映像研究科が出来ました。本当にものすごく魅力的なカリキュラムと先生だったので、ここに入らないでどこに行く!ぐらいな気持ちで受験し、通わせてもらいました。

芸大大学院卒の監督は、『東南角部屋二階の女』の池田千尋監督に続き、船曳監督で2人目ですか?

 そうですね。次は一期生の加藤直輝さんが『アブラクサスの祭』という作品でデビューされますが、ものすごく才能がある方です。

PFFやテレビ・ドラマのディレクターに加え、芸大大学院映像研究科という新たな監督への道が開けたように見えますが、芸大ではどのような授業をしているのですか?

 座学と実作がありますが、ほとんどが実作中心の学校で、これは世界的にも珍しいと思います。私は監督コースに入りましたが、短編3本と最後に長編1本、計4本を撮らせてもらいました。メディアも16mm、ビデオ、HDと様々でしたが、とにかく実作が中心なので、皆が一丸となってずっと映画を作っている。そして出来上がった映画を先生に観ていただき、コメントをいただくことの繰り返しでした。講義ももちろんあります。黒沢 清さんは「じゃ、今日は長回しについて」と言われて、長回しを使っているお好きな映画のいろいろな場面を観せて、ここはすごくてとか。また、ミュージカルの回では黒沢さんがミュージカルを語り尽くされたり、本当に講義も面白かったです。私は監督コースだったので先生は北野 武さんと黒沢 清さんでしたが、監督コースの学生と、北野さん、黒沢さんを囲んでいろいろお話を聞いたり、自分の作品についていろいろアドバイスをいただいたりしました。

新人の監督さんの中には作家性に偏った方も少なくないですが、『携帯彼氏』は良い意味で多くの方々が楽しめるエンタテインメント性が高い作品となっています。以前から、このような方向性で映画を撮りたいと思っていたのですか?

 元々、100%ジャンル映画、エンターテインメントの方向性でいく作品がやりたかったわけではないですが、結構欲張りなのでいろいろなタイプの映画を撮りたいなと思っていました。今回は100%こういう方向でというコンセプトでやらせていただきましたが、これからは自分の趣向も組み込んでいろいろ作っていきたいなと思っています。ただし、観客をとても大切に思っているので、まずは観客を引き込んで、観客に観てもらえるような映画を作りたいというのが一番にあります。

ご自身の指向している方向性は、どんな監督に近いのですか?

 言うと恥ずかしいですが、最近のスピルバーグ監督はすごい領域に達しているなと思います。もちろん、最初から華々しいキャリアの方ですが、特に最近はエンターテインメントだけれども人間の存在の奥深いところまで達している、達しようと追求している、しかも映画表現の中で。すごい求道者だなと尊敬しています。

長編の監督は初めてですが、芸大で習ったこととはここが違うぞ!みたいなことはありましたか?

 芸大在学中に、プロの方と一緒に『夕映え少女』という作品を撮りましたが、その時は商業映画としてHD撮影だったので、けっこう鍛えられました。もちろん、今回も商業映画として成り立たせるためにはいろいろなプロセスがありましたが、『夕映え少女』で慣れていたので、割とすんなり入っていくことができたと思っています。

『携帯彼氏』の原作は携帯小説ですが、携帯小説はよく読まれますか?

 今回初めて読みました。『携帯彼氏』は携帯小説だからやはり携帯で読まないと思って携帯電話で読みましたが、すごく面白い体験でした。ドラクエみたいなRPGゲームをやっているような気分になり、自分でストーリーを進めていくというか、次読みます?読みません?といった選択を常にされているような感じで、自分で進めているような不思議な感覚がありました。

主演は今年最も注目されているアイドルの川島海荷さんですが、彼女の印象は?

 この映画に主演していただきましたが、主役のキャラクターに合っているなと思いました。川島さんは一見はかない感じですが、眼がすごく力強いですよね。主人公の里美は、最初は恐怖にさらされてどうすればいいか分からないような状態なのですが、だんだんと自分の意志を持ち恐怖と対抗していくようにキャラクターが変化する。川島さんは元々その両面を持ち合わせているので、里美は彼女のキャラクターにピッタリだと思います。

脚本と製作を担当された柴田一成さんは、『夕映え少女』(協力プロデューサー)でもご一緒されています。ご自身の監督作『リアル鬼ごっこ』では若者から支持されてヒットを記録しましたが、今回の撮影では柴田さんから何か影響を受けましたか?

 もちろん、影響はありました。柴田さんが書かれた脚本は、ストーリーの展開がすごくスピーディでした。自分は今までそういった作品を撮ったことがなかったので、どんどん状況が変わり、いろいろなことが起きる脚本を自分の中で咀嚼していく過程では、大きな影響を受けていると思います。撮影に入る前にも、「こういう撮り方をしようと思っているのですが」とか、いろいろなお話をさせていただきました。

まだ出来上がってから時間を経ていないので客観的にご覧になることは難しいかもしれませんが、『携帯彼氏』を採点すると何点ぐらいですか?

 うぁ、難しい(笑)。まだまだですが、及第点ということで(笑)。

最近ご覧になった日本映画で気になる作品は?

 横浜聡子監督の『ウルトラミラクルラブストーリー』です。横浜組のスタッフには映画美学校の人間が多いので個人的に仲が良く、私の映画でもスタッフをやってもらっているので、横浜さんには親近感を感じています。『ジャーマン+雨』という前の作品を観せていただきましたが、普通に人間ドラマとして感動できる良い映画だなと思いました。『ウルトラミラクルラブストーリー』も観せていただきましたが、日本映画でこんなに冒険をしているというので、すごく励まされました。

今後の予定は?

 もしかしたら、また自主映画で。来年あたり、早い時期に公開するかもしれないです。

とはいえ、まずは『携帯彼氏』のヒットにかかっているわけですね?

 そうですね(笑)。

ファクトリー・ティータイム

(文・写真:Kei Hirai)


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