インタビュー・記者会見等、映画の“いま”をリポート!

Cinema Factory

Cinema Flash



最新ニュース

トップページ > 最新ニュース > 『風の中の牝雞』

『風の中の牝雞』第79回ヴェネチア国際映画祭・ワールドプレミア上映

2022-09-06 更新

風の中の牝雞kazenonakanomendori
©1948/2022 松竹株式会社


 第79回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門(ヴェニス・クラシックス)にて、小津監督戦後2作目の作品『風の中の牝雞(めんどり)』(1948年製作、英題:A Hen in the Wind)4Kデジタル修復版のワールドプレミア上映が、9月1日(木)17:30(現地時間)に行われた。


kazenonakanomendori

 ジャン・ルノワール、ピエル・パオロ・パゾリーニ、今村昌平、鈴木清順、エドワード・ヤンといった世界の映画史に名を遺す監督たちの作品に並んでの上映となり、小津安二郎監督作品のデジタル修復版が世界三大映画祭クラシック部門へ選出されるのは、2013年のベルリン国際映画祭の『東京物語』以来8作目となる。

 4Kデジタル修復を施された本編は、音声の修復によりセリフが聞き取りやすくなったほか、4Kスキャンし修復したことにより、室内の装飾や洋服の質感も以前よりはっきりと見ることができるようになった。

 また現地では上映にあわせて海外版のポスターも初披露。
 戦後まもない時期に製作され当時の日本が抱える厳しい現実に焦点を当て苦悩する女性の姿を描いた本作は、いわゆる“小津映画”とは一線を画す異色作として観るものに衝撃を与えてきた。
 小津監督作品後期の小津調のスタイルに到達する前夜の、感情がぶつかり合う描写は注目に値する一作となっており、新ビジュアルはその 世界観を大胆な色とレイアウトで表現している。

 上映が行われたのは、ヴェネチア映画祭会場で今年新たにオープンした、Sara Corinto。客席には、地元の一般の方など老若男女の観客が集まり、熱気あふれる中、上映がスタートした。


kazenonakanomendori

kazenonakanomendori

 観終わった観客からは「修復が素晴らしく、まるで現代に作られた作品のようなクオリティだと思った」と修復に対してのポジティブな感想が多く聞かれたほか、「1940年代という厳しい時代の日本を見るのはつらかったが心に響く内容で、小津らしくないバイオレンスが印象的」「映画祭で上映している作品のどれとも違う印象。エンディングがとてもパワフルな終わり方で、想像しない最後だった」と、いつもの小津作品からは想像できないシーンに驚きの声も多く聞かれた。

 また「昔の作品の女性像はファム・ファタールか弱々しい描写が多い中、この女性はとても強いと思う。すごくいい作品だった」など主演の田中絹代の演技にも注目が集まるなど、来年の小津安二郎監督・生誕120周年の年を目前に、世界からも大きな注目を集める上映となった。


上映前スピーチ概要(松竹株式会社メディア事業部 海外版権室長:小山芽里)
 松竹はクラシック作品の修復作業を10年以上行ってきておりますが、作品の選定理由はその時々によって違います。今回は、「田中絹代」をキーワードに、来年生誕 120 年を迎える小津安二郎監督作品から田中絹代出演の本作を選定しました。
 田中絹代は50年以上に及ぶ女優人生で200本以上の作品に出演した日本を代表する唯一無二の映画女優であると共に、女性監督がほとんど存在しなかった時代に商業映画を6本監督した日本映画界のパイオニア的存在です。我々は昨年、田中絹代監督作の『お吟さま』を修復し、他社と共に各地で特集上映を組むことで、この素晴らしい映画人にもう一度注目していただきたいと思いました。
本作『風の中の牝雞』での彼女は、それまでの清純派女優から一変し、困難な状況を生き抜く母親としての凄まじい演技を披露しています。この作品一番の見どころです。
 本作は、終戦の3年後、まだ日本が占領下にあった時代に公開された作品です。戦争が市井の人々の生活にどんな影響を与えるかを描いていて、戦争はその最中もその後も、戦場のみならず日常生活にまで不幸をもたらす、というテーマが根底にあります。図らずも現在の世界情勢を考えずにはいられないこの作品を、たくさんの方々にご覧いただき、平和への一助になることを願っています。


kazenonakanomendori

<第79回ヴェネチア国際映画祭クラシック映画部門(ヴェニス・クラシックス)>

 ▼会期:2022年8月31日(水)~9月10日(土) ※本作の上映日時は調整中。

 ▼ 映画祭公式サイトhttps://www.labiennale.org/en/cinema/2022(英語、外部サイト)


『風の中の牝雞』4Kデジタル修復版

 (かぜのなかのめんどり/英題:A Hen in the Wind/1948年公開作品/上映時間:82分)

 ■ あらすじ:

 東京の下町で間借り暮しをする雨宮時子(田中絹代)は幼い息子・浩を抱えて夫・修一(佐野周二)が戦争から復員するのを待ちわびていた。ミシンで洋裁の仕事をしながら、手持ちの着物を売るなどして慎ましく暮らしていたが、ある日、浩が突然の発熱をしてしまう。病院では急性大腸カタルだと診断され、なんとか命を取りとめることができたが、その医療費の支払いをすることができない。途方に暮れた時子は、一度だけいかがわしい安宿で見知らぬ男に体を売ってしまう。
 時子は、自分の犯した過ちを心から悔やむのだったが、そんな時、夫の修一が帰ってくる。浩の入院のことを知った修一に、その支払いをどうしたのか問い詰められ、追い詰められた時子はついにすべてを打ち明けてしまうのだった……。

 ■ 監督:小津安二郎
 ■ 脚本:斎藤良輔、小津安二郎
 ■ 出演:田中絹代、佐野周二、三宅邦子、笠智 衆



(オフィシャル素材提供)



関連記事
4Kデジタル修復版が第79回ヴェネチア国際映画祭クラシック部門にてワールドプレミア上映が決定!

Page Top