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トップページ > インタビュー > 『おっぱいバレー』羽住英一郎監督 インタビュー

羽住英一郎監督 インタビュー

2009-05-05 更新

登場人物のストレートな姿勢が、インパクトある題名の映画なのになぜか爽やかなのです

おっぱいバレー

羽住英一郎監督

【羽住英一郎監督】
1967年3月29日生まれ。2004年に『海猿 ウミザル』で映画監督デビュー。『逆境ナイン』(05)に続いてメガホンを取った『LIMIT OF LOVE 海猿』(06)では、同年の実写映画ナンバーワンの興行成績を記録した。ROBOT所属。


配給:ワーナー・ブラザーズ映画、東映
全国ロードショー中

 『LIMIT OF LOVE 海猿』でメガヒットを記録した羽住英一郎監督の最新作『おっぱいバレー』が公開された。強烈なインパクトのタイトルながら、感動的な青春の1ページを描いた作品を見事に映画化した監督のお話から、本作の魅力の秘密を探った。

映画監督になろうと思ったきっかけは?

 中学生の頃に、江戸川乱歩等の冒険小説を読んでいる時のドキドキワクワクする感覚が好きだったので、自分でも物語を作りたいと思い、小説のような文章を書たんです。
でも同じ頃、リバイバル上映していた『第三の男』を観て、読み物よりもドキドキワクワクする感情が煽られ、映画って面白いなと思ったのがきっかけですね。

『おっぱいバレー』を撮ろうと思った理由は?

 やはりタイトルのインパクトですね(笑)。
打ち合わせをしていた時、たまたま原作本がプロデューサーの机の上にあったんです。背表紙が見えていて、打ち合わせの間“『おっぱいバレー』って何だろう?”とずっと気になってしまって(笑)。打ち合わせが終わった後、そのプロデューサーに「『おっぱいバレー』ってなんですか?」と聞いたんです。その時聞いた粗筋がとても面白くて。まず駄目な男子中学バレー部員が「試合に勝ったら、先生がおっぱいを見せてくれる」という目的のため頑張ることに共感できたし、結果としてありえない約束をさせられた先生と彼らはどうなるのか?が気になったんです。すぐに面白そうだと原作を読んでみたら、想像したとおりの感情を満たしてくれたので、絶対に映画化したいと思いました。
『おっぱいバレー』には映画『クール・ランニング』と同じ匂いを感じました。『クール・ランニング』が実話であるということ、雪の降らないジャマイカでボブスレーで冬季オリンピックを目指すという物語。そして、物語には笑えるシーンが絶対に沢山あるだろうし、結末が気になる。きっと主人公たちが周囲にバカにされながら逆境の中で頑張っている姿には感動するんだろうな。『クール・ランニング』のような見る前から面白そうな匂いがする企画はすごいなとずっと思っていましたが、『おっぱいバレー』にもそれを感じたんです。それが『おっぱいバレー』の強い印象でしたね。

そのインパクトのあるタイトルですが、見方によっては危険な印象もありますね。映画化にあたり、タイトルを変えようとは思いませんでしたか?

 実際に“おっぱい”というタイトルではお客さんがチケットを買いにくいだろうなとか、友達や恋人を誘いにくいとか、ネガティブな部分もあると思います。そういった部分を全て判った上で、インパクトあるこのタイトルは1回聞いたら忘れないし、絶対に気になると思うんです。僕自身「次の映画は何を撮るんですか?」と聞かれて「『おっぱいバレー』です」と答えると、「えっ!?」と返ってきます。粗筋を説明すると、多くの人が面白そうと言ってくれました。「先生役は誰?」と聞かれ「綾瀬はるか」と答えると、次の質問は「結局、試合に勝っておっぱいを見せるの?」と聞いてきます。結末まで興味が持続するのですね。“おっぱい”と言い合える仲だったら面白さが伝承していく映画なので、そういう意味では『おっぱいバレー』というタイトルは捨てがたかったです。

撮影現場でも、合い言葉のようにスタッフとキャストの皆さんが「おっぱい!」と言っていたそうですね?

 今回の6人の中学生役は、すごく駄目な子たちを選んだんです(笑)。オーディションでは、芝居ではなく学校で話しているエッチな話をしてもらい、その会話を聞いて駄目オーラを醸し出している子たちを選びました(笑)。
でも、大人の前では「おっぱい」と言うことを恥ずかしがって、その駄目な部分をさらけ出さないんです。台詞を読ませても、“おっぱい”という言葉を恥ずかしがって言えないんです。
日常子供たち同士でやっている馬鹿な感じが出ないので、これじゃいけないなと気がつき、“「おっぱい」なんて恥ずかしくない、「チャオ」と同じだ!”ということで、「おはようおっぱい!」「おつかれおっぱい!」と挨拶に「おっぱい」を付けるルールにしたんです。スタッフ・キャスト全員で言うことで恥ずかしい言葉じゃないと思って貰いたかったんです。それに、馬鹿なことを楽しんでやっている感じを撮影現場全体にも出したかったんです。せっかく良い駄目オーラを発しているのに、自分たちを良く見せようとするんですよね(笑)。でも、言い易い雰囲気になったらどんどん調子に乗って、駄目オーラをさらけ出してくれました。

あの6人の生徒役はいかにも普通にいそうな駄目な子たちですよね?

 本当に駄目な子を選んでしまったので、最初は自分でもちょっと不安になりました(笑)。撮影では、子供たちを親元から離し1ヵ月半ロケ現場に合宿しながらの撮影を進めました。中学生の男の子はきっとそういう経験はないでしょうし、そういう一生忘れられない経験をすると、間違いなく人間として成長しますから、なるべくシーンの順番に撮っていきました。このひと夏で成長していく姿をフィルムに焼き付けていけば、駄目な奴なりに何かが出てくるのではないかなと信じていました。根拠がない自信ですから、非常に不安でしたが。

多くの応募者があったオーディションでは、どうやってあの6人を選んだのですか?

 普通のオーディションでは、台詞を読ませたり芝居をさせて勘の良い子や演技の上手い子を選ぶのですが、今回は本当にずっとエロ・トークですね(笑)。「エッチな本を持っているか?」「どこに隠しているか?」といった会話をしていく中で、駄目だなっていう子ばかり選びました。自分を良く見せようとしていて、「今、そんなことは言っていないです」みたいな奴ばかり選んでいったのです。そういう意味では素直な奴、不器用な奴を選んでいきました。

あの6人を選ぶのは、ある意味では主演女優を選ぶよりも大変ですよね?

 そうですね。彼らが出演した過去の作品を見て、この子なら上手いから大丈夫といった安心感は一切無かったです。オーディションでは本人が持っているキャラが出ていますが、実際に台詞を言わせたらどうなのかは、撮影が始まってみないと判かりませんでした。
今回は『おっぱいバレー』というタイトルですが、女性を意識し女性に観て欲しいと思っていたので、子供たちがエッチなことばかり考えたり言ったりしますが、それがいやらしくて気持ちが悪いというよりはエッチなことに一生懸命で可愛いなと思って欲しかった。

主演の綾瀬はるかさんは、『僕の彼女はサイボーグ』『ハッピーフライト』など秀作への出演が続いていますが、撮影前にはどのような印象でしたか?

 清潔感があって健康的でとても魅力的だなと思っていました。
今回の映画では、男子バレー部員たちと「試合に勝ったら先生のおっぱいを見せる」というあり得ないやり取りがありますが、普通の女性なら、すぐにそんな約束は無しとなりますよね。でも、綾瀬はるかなら、もしかしたら中学生が一生懸命「お願いします」と頼んだら、約束してしまいそうな、どさくさに紛れて約束をとりつけられそうな、ちょっと抜けているというか天然の部分もありそうなイメージがあったので、美香子役にはピッタリだと思いました。

音楽についても、舞台となった1979年頃を思い出させる素晴らしい選曲でした。J-POPという言葉が出来る前、ニューミュージックと歌謡曲の時代の名曲が続々と出てきますが、選曲も監督ご自身でなさったのですか?

 はい。1979年は僕自身がちょうど中学生の頃でした。原作の舞台は現代ですが、なるべく話をシンプルにしたいなと思っていたんです。現代ではエッチな画像がが沢山溢れていて、ネットでもコンビニでも見ることが出来ます。ですから、設定にリアリティを持たせるため、もっと情報が溢れていない時代に置き換えて、若い男の子たちがおっぱいを見たいから頑張るというシンプルな話にしたかったんです。純粋に先生と生徒の話だけにしたかったんです。
そうして時代設定を30年前にしたいと思った時、『アメリカン・グラフィティ』や『グローイング・アップ』みたいに、その時代の楽曲が流れるようにしたいなと思いました。『おっぱいバレー』という映画を、ウェルメイドな青春映画にするためにも、そういったパッケージ感がすごく大事だと思いました。

選曲のために、当時のヒット曲を改めて聞き直したのですか?

 自分が好きだった曲ばかりなので、特に聞き直すことはしませんでした。ただ、気をつけたのは、僕ら世代が懐かしいだけではなくて、当時生まれていなかった今の若い人が聞いた時に、“この曲はクールだね、良い曲だね、カッコイイね”と思えるような曲、を選ぶことを心がけました。

脚本の岡田惠和さんとご一緒するのは初めてですか?

 いいえ、ご一緒したことがあります。岡田さんにお願いしたほうが逆に面白いものになるのではないかと思ったんです。

『おっぱいバレー』のように、エッチなことしか考えていない馬鹿な青年たちが主人公の映画は古今東西たくさんありますが、その中で監督がお好きな作品はありますか?

 『グローイング・アップ』や『ボーイズ・ボーイズ』は好きですね。基本的にこういう映画は好きです。

今回の撮影に当たり、念頭においた作品はありますか?

 女性が観られるように、どこまでが可愛いで許されて、どこからが気持ち悪くなってしまうのか、そのボーダーラインに気をつけました。

お好きな作品、監督、俳優は?

 40代の俳優さんとご一緒したいですね。最近気になった作品ですが、『ダークナイト』の衝撃は大きかったです。

最後に『おっぱいバレー』の魅力をお願いします。

 普通は、最初は“先生のおっぱいが見たい”というきっかけでも、途中ですごく憎たらしい敵が現れ「あいつらには負けたくない」だったり、あるいは自分たちで試合をするのは最後だからせめて一勝はしたいとか、最初はおっぱいを見るためだったのが、ある瞬間から価値観が変わっていくんです。それこそが成長ですし、物語もドラマティックですが、この映画は最初から最後までおっぱいが見たいだけなんです(笑)。その約束と向き合う美香子先生も、そんな約束は守りたくないと思いながらも、子供たちを勝たせたいという矛盾の中にいながら、不純な動機で正面から向かって来る彼らと逃げないで真正面で向かっていく。お互いにぶれないストレートな姿勢が、インパクトのある題名の映画なのになぜか爽やかに感じる。そういうところが好きですね。
『おっぱいバレー』というタイトルはインパクトありますが、観終わった後にもう一度このタイトルを見てみると、ちょっと可愛いタイトルに見えるのではないかと思います。映画自体可愛い映画になっていますので、そのギャップを楽しんでもらいたいです。
『おっぱいバレー』というタイトルを聞いたら絶対気になるはずなので、気になっているのだったら勇気を持って映画館に見に行けば本当にすっきりします。

ファクトリー・ティータイム

最初は自分の耳を疑い、続けて頭の中であらぬ妄想が広がるタイトルの本作は、爽やかな感動と涙を残してくれる青春映画の傑作だった。恋人や友人を誘って観に行けば、終映後に評価が上がるのは確実。ぜひ見逃さないように!
(文・写真:Kei Hirai)


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