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トップページ > インタビュー > 『ハピネス』ホ・ジノ監督 インタビュー

ホ・ジノ監督 インタビュー

2008-11-14 更新

人と人が出逢った時の幸福な気持ちをどうやって映画の中で描いたらいいのか、いつも悩んでいます

DNAがアイ・ラブ・ユー

ホ・ジノ監督

【ホ・ジノ監督】 1963年8月8日生まれ。延世大学哲学科卒業後、国立の映画学校である韓国映画アカデミーに入学。98年に『八月のクリスマス』で長編映画監督デビュー、青龍賞作品賞・大鐘賞新人賞など、韓国の映画賞を総なめにし、カンヌ国際映画祭批評家週間でも高く評価される。2001年の『春の日は過ぎゆく』では青龍賞作品賞・百想芸術大賞監督賞を受賞、ペ・ヨンジュン主演の『四月の雪』(05)では“冬ソナ”ブームの日本で大ヒットを記録する。『ハピネス』では、青龍賞監督賞を受賞する。

配給:エイベックス・エンタテインメント、エスピーオー
9月27日よりシネマート六本木で開催の「韓流シネマ・フェスティバル2008」にて上映 以降、各地で公開予定

 ペ・ヨンジュンとソン・イェジンが主演し、日本でも大ヒットを記録した『四月の雪』に続くホ・ジノ監督の最新作『ハピネス』が、韓流シネマ・フェスティバル2008で上映された。『ハピネス』はファン・ジョンミンとイム・スジョンという韓国映画界きっての演技派を主役に迎えたラブ・ストーリー、今回も静かな感動を届けてくれたホ監督に本作の見どころについて聞いた。

今回の作品でも非常に素晴らしい演技を見せたイム・スジョンさんとファン・ジョンミンさんを、主役に選ばれた理由を教えて下さい。

 今までの作品に出演していただいた俳優さんは、感情表現を押さえた静かなイメージの方が多かったのですが、今回の映画のヨンス役は今までの映画とはちょっと違ったキャラクターにしてみようと思いました。つまり、動的な演技が出来る俳優さんが必要となったのですが、ファン・ジョンミンさんの演技にそういった印象を持っていたので、お願いしました。イム・スジョンさんはデビューの頃から知っていました。彼女は童顔なので若く見えるのですが、実際にお会いすると成熟した女性です。この映画のウニという女性には、はつらつとした部分と、それと背中合わせの暗い部分、成熟した部分がありますが、イム・スジョンさんにはピッタリだと思ったので、お願いしました。

ファン・ジョンミンさんが見せた都会的な部分には新鮮な驚きを感じましたが、二人の出演を決めてから、当初の予定を変更した部分はありますか?

 ファン・ジョンミンさんといえば、どうしても『ユア・マイ・サンシャシン』での田舎の青年役のイメージが強いですが、実際には洗練された都会的なイメージの人です。ですから、この映画のヨンスは都会での生活と田舎での生活が描かれていますが、その両方のイメージにピッタリだと思いました。先ほども言ったように、ファン・ジョンミンさんは、動的な演技ができる俳優さんです。実は、最初に描いていたヨンス像はもっと静かなキャラクターでしたが、ファン・ジョンミンさんに決まってから、はつらつとした部分や積極的な部分が色濃く出せたかなと思います。ウニのキャラクターは元々可愛らしい部分は強調されていませんでした。イム・スジョンさんにお願いしたことにより、療養所で体操をするシーンで見せた可愛い動きや愛らしさは、より多く表現することができたと思います。

前作の『四月の雪』では、状況設定だけ伝えて後の演技は役者さんに任せるという監督の演出スタイルに、役を作り込んでから現場に入るペ・ヨンジュンさんが、当初は戸惑ったと聞いています。今回の撮影でも同じような演出スタイルをとったのでしょうか? また、監督の演出に対し、主演の二人はどのように応えてくれましたか?

 今回の演出スタイルも以前と同様、俳優さんに状況を説明し、その中で自由に演じてもらいました。こちらでは、お膳立てだけを作るやり方です。ファン・ジョンミンさんはアイデアが豊富な俳優さんなので、状況を説明すると、その中でいろいろなアイデアを出し演じてくれます。例えば、ファン・ジョンミンさんがギターを弾きながら歌うシーンがありましたが、最初はシナリオになかったのですが、現場でファン・ジョンミンさんがアイデアを出し、撮ることになりました。イム・スジョンさんは、自分からたくさんのアイデアを出すというよりも完全にその人物に成りきってしまうタイプの役者さんなので、ウニが於かれた状況を説明すると、ウニに成りきって演じてくれました。

今までの作品の主人公は、『八月のクリスマス』の写真家、『春の日は過ぎゆく』の録音技師、『四月の雪』の音響技師といった手に職を持っている人物が多かったですが、今回の作品でファン・ジョンミンさんが演じたのは俗っぽい人物です。そのようなヨンスと田舎の素朴な女性ウニとの恋愛を描こうと思った理由は何ですか?

 今回の作品では、最初に男性が療養所に行くという設定を考えていたので、そのきっかけを考えないといけません。そこで、酒に溺れた快楽主義的な都会生活を送っている人物が、まず頭に浮かびました。酒に体を壊し療養所に行くため、職業はカラオケ店の店長にして、物語を作り始めました。

過多の情報や刺激の中、本当に大切なものを見失い、そのことに気がついた時には手遅れだったという物語ですが、監督にとっての一番大切なもの、“ハピネス”はどこにありますか?

 幸福はとても身近にありますが、と同時に1ヵ所に留まらず常に居場所を変えていると思います。すぐそばにあるのに、いつも移動しているのが幸福だと思います。

この映画のラスト・シーンは、雪の療養所です。今までの作品でも雪のシーンが多いですが、雪に対して特別な思いがあるのですか?

 彼のシーンは雪を降らせて撮ったのですが、最後を雪にしたのは意図的なものです。ファン・ジョンミンさんが演じるヨンスが療養所に戻るところで終わりますが、ヨンスはもう一度あの場所から始めてみようと思い、戻ったわけです。もちろん、健康を取り戻すため療養所に行くのですが、その時、ウニからのプレゼントとして雪が降ったと考えたかったのです。寂しく一人で療養所に行くのですが、彼の心の中にはウニの気持ちがあって、ウニの気持ちと共に療養所に戻ったという印象にしたかったので雪を降らせたのです。

ペ・ヨンジュンさんとソン・イエジンさんが主演した前作『四月の雪』の日本公開時には大変な騒ぎになりましたが、当時、あの騒動をどのようにどのように感じましたか?

 あのような大きなイベントには慣れていませんでしたし、どちらかというと好きではありませんが、自分が作った映画の観客の皆さんと出会える機会だと思ってあの場に臨みました。とても楽しい経験ができたと思っています。

同じような経験は、他の場所でもありますか?

 あの後、中国で『四月の雪』を公開した時にも似たようなイベントがありました。

今回の韓流シネマ・フェスティバルでの来日は、『ハピネス』の上映後、観客の皆さんとティーチインを行われましたが、その印象は?

 3年ぶりの来日ですが、直接観客の皆さんとお会いすることができましたし、上映後のティーチインでは、とても楽しんで映画を観ていただいた印象を持ちました。質問を聞いても、映画に対する理解がとても深いと感じましたし、楽しい時間を過ごすことができました。

最近、妻夫木聡さんやオダギリジョーさんが韓国映画に出演されていますが、一緒に仕事をしたい日本の俳優はいますか? また、映画化してみたい日本の作品はありますか?

 偶然ですが、今名前を挙げられた2人とは、ぜひ一緒にやってみたいと思っています。オダギリジョーさんはとても良い演技をされる俳優さんですし、妻夫木聡さんは『ジョゼと虎と魚たち』という映画で韓国でもよく知られています。女優さんでは、『嫌われ松子の一生』に出ていた中谷美紀さんは素晴らしい演技を見せてくれましたし、蒼井優さんも良いなと思います。日本の小説や漫画でも良い作品があれば映画化したいと思っていて、最近は良く読んでいます。

監督の作品は、大部分のシーンでソウルなどの都会ではなく韓国各地の美しい風景の場所で撮られていますが、日本で撮影をしてみたい場所はありますか?

 以前に京都に行った時、こういう場所で映画を撮りたいなと思いました。

今後の予定は?

 現在、いくつかの企画の話を頂いている段階です。できるだけ早く次の作品を形にしたいので構想を練っていますが、早い段階で次の作品の撮影に入ることができると思います。

それは恋愛映画ですか?

 検討中の作品の中のひとつは、恋愛映画です。他には、歴史物やコメディーもありますが、この中のどれを選ぶのかはまだ決まっていません。これからは、いろいろな映画を撮っていきたいと思っています。

恋愛映画を撮る際に、一番大切にしていることは何ですか?

 大事にするというよりも悩んでいることですが、普通、人が出逢う時にはとても幸福な気持ちですね? その幸福な気持ちをどうやって映画の中で描いたらいいのか、いつも悩んでいます。

今回の映画では印象的な古い曲(70年代にヒットしたハン・デスの『幸福な国へ』)が使われていますが、その歌詞の一部からタイトルを決めたと伺っています。『春の日は過ぎゆく』も同じようにしてタイトルを決められたそうですが、映画を撮る際に音楽はどの程度重視されていますか?

 1本の映画を作る時には、何かを考えることからスタートしますが、その段階から音楽や歌詞はとても大切な存在です。音楽や歌詞には、映画のストーリーを牽引する柱のような役割があると思います。『春の日は過ぎゆく』の場合にも、実際に同じタイトルの歌があるのですが、その歌が持っている情緒的な面、感情の流れが柱になってくれたように思いましたし、それを柱として、ちょうど家を建てていくような感じでそこを土台として、いろいろなものを積み上げていきました。今回の『ハピネス』でも『幸福な国へ』という歌を使っていますが、歌詞がとても良いんですよ。この歌が醸し出している情緒的な部分を、今回の映画の中にも活かしてみました。

そういった古い曲は良く聴かれるのですか?

 そんなに頻繁には聞いていませんが(笑)。

ところで、『春の日は過ぎゆく』で来日された時、無印良品がお好きだと言われていたのを覚えていますが、日本のファッションにも興味をお持ちですか?

 日本のファッションを見ていると、個性が強いものが多いような気がします。関心はありますが、自分自身は追いつくことができないような気がします。

ちなみに、今日着ているのは?

 韓国の服です(笑)。

最後に、これからこの映画を観る日本の皆さんにメッセージをお願いします。

 今回、『ハピネス』という映画が日本の観客の皆さんと出逢えることになり、非常にうれしく思っています。この映画には少し滑稽な部分も描かれていますが、愛の深みや愛の悲しみ、様々な愛の形、いろいろな愛にまつわる気持ち、感情が表現されているので、そういった点を楽しんで見て頂きたいと思います。たくさんの応援をお願いします。

ファクトリー・ティータイム

いつものように、愛について映画について、訥々と語るホ・ジノ監督。今回も、観る人の涙と感動を誘う素晴らしい作品を届けてくれた。日本でもおなじみの二人が繰り広げる涙のラブ・ストーリー。ぜひ観逃さないで欲しい。
(文・写真:Kei Hirai)


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