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舞台挨拶・イベント

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『新宿タイガー』
第19回「ニッポン・コネクション」
Q&A

2019-07-16 更新

佐藤慶紀監督、睡蓮みどり、里見瑶子、LANTAN(音楽)

新宿タイガーshinjuku-tiger 配給:渋谷プロダクション
© 「新宿タイガー」の映画を作る会

 ドイツ・フランクフルトで開催された第19回「ニッポン・コネクション」のドキュメンタリー部門である「ニッポン・ドックス」で、佐藤慶紀監督の『新宿タイガー』がインターナショナル・プレミアを果たし、監督と出演者の睡蓮みどりと里見瑶子、音楽担当のLANTANが登壇、Q&Aに参加した。


上映前の挨拶

佐藤慶紀監督: タイガーさんは71歳の男性で、日本ではいわゆる団塊の世代に属する方なんですけど、『新宿タイガー』はその方の生き方を描いた作品です。ドイツの皆さんには日本人はこういう民族じゃないかというイメージがあるかと思いますが、『新宿タイガー』をご覧いただいたら、日本人にもいろいろな生き方をしている人がいるんだなと発見していただけるのではないかと思います。ぜひ、ご覧ください。


Q&A

MC: 映画の成り立ちを教えてください。

佐藤慶紀監督: 私は東京で暮らして10年以上になるんですが、新宿タイガーさんを知らなくて、この映画を一緒に創ったプロデューサーの方に教えてもらいました。タイガーさんの写真を一目見て、一体この人は何者なんだろうという好奇心がすごく湧いたんですね。あと、タイガーさんがもう50年近くああいう生き方をしていると知って、いま日本ではちょっと閉鎖感を覚えることもあるのですが、そんな中でタイガーさんみたいな生き方をしている人がいることを紹介できたら面白いだろうなと思って、この映画を制作しました。


shinjuku-tiger

MC: 新宿タイガーさんのことばかりでなく、当時の歴史的背景や現在の政治的問題なども描かれています。

佐藤慶紀監督: タイガーさんが50年近く新宿でタイガーさんをやっていることを知ったとき、同時に新宿の歴史も掘り下げられると思い、タイガーさんの生き方を追いつつ、併せて新宿の歴史も描くというのは当初から考えていました。タイガーさんを取材する過程で、周りの方々も取材しましたが、今の日本で起きている出来事があり、それに関連していろいろな活動をされている方々もいらっしゃいましたので、タイガーさんを通してさまざまなことを一緒に描けるなと思いました。


MC: ジャズ・ミュージックが映画の雰囲気にぴったりと合っていますが、ジャズを選んだ経緯は?

LANTAN: ジャズというのは監督のオーダーでした。ジャジーな雰囲気で作ってほしいと提案されましたが、普通のジャズではなくタイガーさんに似合うジャズにするにはどうしたらいいのか、映像を観ながら考えて、タイガーさんのユニークさが音楽でも表現したいと意識して創りました。


MC: (女優二人に)タイガーさんとの出会いを教えてください。タイガーさんとはどのくらいの頻度で会うのですか?


睡蓮みどり: 私はタイガーさんと飲んで酔っ払っている役……というか、お友達の一人です(笑)。タイガーさんと初めて会ったのは10年くらい前なんですけど、映画で観ていただいた通りのテンションで、いつも変わらないタイガーさんですね。一番最初にお会いしたときは、ああいう虎のお面にピンクの髪だったので、ギョッとしたのを覚えています。新宿って独特な街なんですけど、みんなああなわけじゃなく、タイガーさんはやっぱり一風変わった人ではありますね。めちゃくちゃしゃべることにもビックリして、とにかく圧倒されました。
 毎週会うとかそういうことではなく、タイガーさんとは約束してお会いするわけじゃないんです。新宿を歩いているとバッタリ会って、「それじゃあ飲もうか」という流れになります。ちょっと特殊ですね。約束はしない関係なんです。


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里見瑶子: 私がタイガーさんと初めて会ったのは、本作にも出演していた、タイガーさんの大親友である久保新二さんの半生を描いた『その男エロにつき…アデュ~久保新二伝』(2011)という作品があるんですが、私は久保さんの恋人役で出ていて、その撮影がきっかけでした。タイガーさんはもう50年近くもタイガーの格好で新宿に居る方なので、久保新二さんが若い時にもタイガーさんは居て、それから時代を経ても、今もタイガーさんは変わらず居て、何があってもどんな天気であろうとも、新宿であの格好で新聞配達を続けています。その映画の中では、久保さんの人生が進んでいくとき、タイガーさんも新宿の街でずっとあの格好で頑張って生き続けているという、そういう登場の仕方をしています。


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 その作品の中で出会ったわけですが、それ以前にも新宿に行くと新聞配達をしているタイガーさんのお姿をたまにお見かけしていて、「まさか本当に会えるとは……!」と感激した覚えがあります。
 それから、タイガーさんは普段からたくさん映画を観ている方で、私は女優として低予算の映画にたくさん出ているんですけど、そういう映画だったり、小劇場の舞台に出演すると観に来てくださいます。タイガーさんは私のことを「銀幕の女優」と呼んでくださって、それがすごく嬉しいです。女優や映画を愛するお気持ち、私たちを応援してくださるタイガーさんのお気持ちが、私にはとても美しく思えて、映画をやっていてよかったなと思わせてくださる存在です。


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ドイツ人観客: 映画を観て、タイガーさんは私のヒーローになりました。撮影にはどのくらいの時間をかけましたか? 桜も紅葉も見られましたが。

佐藤慶紀監督: 実際、延べ一年くらいです。


ドイツ人観客: タイガーさんは映画をご覧になって、どんな感想をおっしゃっていましたか?

佐藤慶紀監督: タイガーさんはいつもの口調で「夢と感動をありがとう!」と言っていました(笑)。


ドイツ人観客: マスクをしている時と外した時では全く印象が違う方なので、驚かされました。

佐藤慶紀監督: 確かにあのマスクでは攻撃的な印象を与えるかもしれませんが、攻撃的プラス愉快な感じもあると思います。タイガーさん自体はとても優しい笑顔をした方で、僕もそのギャップにはすごく惹かれました。虎の格好をしているのに、笑顔は本当に優しいんです。


ドイツ人観客: タイガーさんが流している音楽はどんな曲なのですか?

佐藤慶紀監督: いろいろな音楽を聴かれていますけど、日本だと、高倉 健さんのヤクザ映画のテーマ曲だったり、ローリング・ストーンズを流している時もあります。


日本人観客: 昨年こちらで栄誉賞を受賞された寺島しのぶさんがナレーションを担当されていますが、寺島さんにオファーした経緯を教えてください。

佐藤慶紀監督: 寺島さんに関しては、今回一緒に創ったプロデューサーの方が、以前にキャスティングなどで若松孝二監督と仕事をされていて、その流れで寺島さんのことをご存じで、僕も「寺島さんにやっていただけたら嬉しいな」と思っていたら、承諾してくださったんです。タイガーさんも寺島さんの大ファンで、とても喜んでくれました。


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MC: そうなんです。寺島しのぶさんは昨年、この映画祭にゲストとして参加してくださいましたから、私としても、この作品でナレーションを担当されていたと知ったのは嬉しい驚きでした。エレガントで気品のあるお声で、タイガーさんのような不思議なキャラクターとのコントラストが面白かったですね。タイガーさんは寺島さんと会われたのでしょうか?

佐藤慶紀監督: 会ってはいないです。寺島さんは映画をご覧になりながらずっと笑っていらっしゃって、「ぜひタイガーさんに会いたい」とおっしゃっていたので、いつかぜひ会ってくださったら、タイガーさんにもとても喜んでもらえると思います。


日本人観客: 映画を拝見して、タイガーさんがブレない方だということは分かりましたが、この映画が公開されて、タイガーさんの生活に何か変化をもたらすようなことはありましたでしょうか?

佐藤慶紀監督: タイガーさんは、この映画が公開された後も全く変わっていないですね。彼の本分はまず新聞配達であって、新聞配達をして酒を飲んで映画を観ることなんです。この映画は日本の各地で公開されたので、タイガーさんにも一緒に行ってほしかったんですが、それが新聞配達のある日だったら「俺は行かないよ。まずは新聞配達をして生きていくことが俺の本分だから」と言われまして。本当にブレていない方だと思います。


ドイツ人観客: タイガーさんの扮装にはコンセプトがあるのでしょうか? 日によって季節によって変わったりしますか?

佐藤慶紀監督: まず、季節によって変わりますね。先ほど桜と紅葉の話がありましたが、まさに春だったら桜、秋だったら紅葉というように、タイガーさんの扮装にも変化が見られました。コンセプトはこれだ!という話は聞いていないのですが、ピンクのかつらや様々な模様の洋服など、基本的に派手なものを組み合わせてはいますね。一見バラバラに見える派手な素材をうまく組み合わせて、何故か統一感のあるように見せていて、僕的にはタイガーさんのファッション・センスはすごいなと感心しています。


ドイツ人観客: タイガーさんのプライベートな生活の部分は見せていませんが、その意図をお聞かせください。

佐藤慶紀監督: 確かに、タイガーさんにもプライベートな生活はありますが、この映画では彼の家の中とか、そういった部分は見せていません。当初は僕も知りたかったんですが、タイガーさん自身が嫌がったということもあります。確かに、それを見せてしまったら、せっかくタイガーさんがフィクションの世界を築き上げているのに、その世界を壊してしまうんじゃないかという思いもあって、プライベートは秘密のままで、謎の多い人物として描きたかったというのもあります。
 ところで、フランクフルトにも似たような方がいるそうですね? 何と呼ばれている方なのですか?


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ドイツ人観客: 呼び名はなくて、マスクもしていませんが、花で彩られた奇妙な服装をされていて、やはり自転車に乗っています。ただ、去年亡くなったという噂を聞きました。



(取材・文・写真:Maori Matsuura)



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