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インタビュー

トップページ > インタビュー > 『ショコラ ~君がいて、僕がいる~』オフィシャル・インタビュー

『ショコラ ~君がいて、僕がいる~』
オフィシャル・インタビュー

2017-01-05 更新

ロシュディ・ゼム監督


ショコラ ~君がいて、僕がいる~chocolat
© 2016 Gaumont / Mandarin Cinema / Korokoro / M6 Films
© Julian Torres
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES

ロシュディ・ゼム監督

 1965年9月27日、フランス・ジュヌヴィリエ生まれ。
 俳優として、『愛する者よ、列車に乗れ』(98/パトリス・シェロー監督)、『あるいは裏切りという名の犬』(04/オリヴィエ・マルシャル監督)、『ゴー・ファースト 潜入捜査官』(08/オリヴィエ・ヴァン・ホーフスタッド監督)、『この愛のために撃て』(10/フレッド・カヴァイエ監督)、『漆黒の闇で、パリに踊れ』(12/フィリップ・ルフェーヴル監督)、『虚空のレクイエム -マルセイユ武器密輸捜査官-』(12/ピエール・ジョリヴェ監督)、『バードピープル』(14/パスカル・フェラン監督)、『チャップリンからの贈り物』(14/グザヴィエ・ボーヴォワ監督)などに出演。
 第二次大戦中、フランス兵士として最前線に送り込まれたアルジェリアなど植民地の現地人部隊を描いた戦争ドラマ『デイズ・オブ・グローリー』(06/ラシッド・ブシャール監督)ではロシュディ・ゼムを含め部隊の兵士を演じた5人全員がカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した。
 2006年、脚本も手がけた『Mauvaise foi』で監督デビュー。本作『ショコラ ~君がいて、僕がいる~』は、1991年に起こったギレーヌ・マレシャル殺人事件を映画化した『Omar m'a tuer』(11)、『Bodybuilder』(14)に続く監督4作目である。



 フランス史上初の黒人芸人ショコラと、相方の白人芸人フティット。万人を魅了した彼らの、愛と涙に満ちた感動の実話『ショコラ ~君がいて、僕がいる~』。この度、俳優としても活躍しているロシュディ・ゼム監督のオフィシャル・インタビューが届いた。


フティットとショコラについては以前から知っていましたか?

 脚本を読んで初めて知った。(プロデューサーの)ニコラス・アルトメイヤーとエリック・アルトメイヤーのふたりからこの企画を提案された時、彼らはすでに改訂を重ねた脚本を用意していた。キャラクターが立っていて、惹きつけられるテーマだった。フランスでも、オリジナルのアイデアはなかなか見つけられない。エリックとニコラスのお手柄だよ。


それがあなたの熱意の源でしたか? オマールいわく、あなたの熱は感染する、と。

 いくつかの要因があった。ひとつは、パリの転換期とその華やかさを描けること。もうひとつは、ふたりの男の友情の物語であること。それから、人生を精一杯生きた快楽主義者という、ショコラのキャラクターだ。彼は大スターになるチャンスをその手で掴んだ。そういう前向きなキャラクターがいることで、フランスの植民地主義者だった過去を隠すことなく、かつ哀愁を漂わせずに、このテーマを扱うことが可能になる。そこが僕にとってとても重要だった。


脚本のシリル・ジェリーとはどのようにして脚本に取り組んだんですか?

 僕は、脚本を仕上げるために、別の脚本家と組んで脚色したりする。今回の場合は、「Omar m'a tuer」(2011)を共同脚本した脚本家のオリヴィエ・ゴルスと組んだ。僕らは、サーカスのステージ上のフティットとショコラの関係性、またそれ以上にサーカスの場を離れた時の2人の関係性に焦点を当てた。


時代ものは初めてですね。どのような撮影準備をしましたか?

chocolat 撮影初日の6ヵ月前から、ファースト・アシスタント、撮影監督、プロダクション・デザイナー、衣装デザイナーといった主要スタッフは参加可能だったので、早くから準備を始めることができた。膨大なリサーチが必要だったよ。だけど、時代ものの本当の大変は、撮影機材などの運搬にある。僕らは、プラハかどこかのスタジオで撮るよりも、パリで撮影することを選んだ。1世紀前を舞台にした映画の撮影現場では、何でも望むセットを立てることができる。いつだって遠くには場違いなクレーンが立っているがね。そこで僕らはカメラ・アングルを決めて、特殊効果を頭に描きながらストーリー・ボードを書いた。


衣装や美術などで、特にこだわったところを教えてください。

 フティット役にジェームス・ティエレを起用したのは?

 オマール・シーのコンビ役には、もっと世間に知られている俳優がよかったと思う人もいるかもしれない。だけど、フティット役にはサーカスの世界に精通する人物が必要だった。ジェームスは俳優であるだけでなく、自分でショーを作っている。彼の名前が挙がった時、満場一致で賛成した。オマール・シーとジェームス・ティエレ……バッチリだ!ってね。ユニークだし、ふたりの持ち味が合わされば、ものすごいものが生まれると確信した。そして、それは間違っていなかったよ。


サーカス・シーンには、どのようにアプローチしたのですか?

ジェームスは、自分のショーでは、監督、セット作り、シナリオ作り、出演の全てを担当している。彼にはパフォーマンスを自分で考えてもらったほうがいいことは明らかだった。誰がジェームスより上手に演出できる? 僕は少しモダンなタッチを入れてほしいと頼んだだけで、あとは彼の自由裁量に任せた。撮影に入ると、オマールとジェームスには自由に動くように声をかけた。「君たちが楽しければ、みんな楽しくなる」とね。その後、最高のパフォーマンスを選び取るのは僕の責任だった。編集中、いい映像がありすぎて困ったよ。ふたりのパフォーマンスはどれも独創的で面白かった。だけど、10分間のパフォーマンス中、2~3分しか使えなかった。映画は記録映像じゃないからね。全部残したかったけど。


オマールとジェームスの共演シーンには、どのようなアプローチをしましたか?

 2人の間には本物の絆があるとすぐに分かった。初回のカメラ・テスト中、スタッフたちの顔に笑顔が見られた時に、手ごたえを感じたよ。オマールはずっとトレーニングに励んでいたが、急に吹っ切れたように身のこなしも声も変わった。それまでの努力の結果さ。ジェームスに関しては、彼の狂気と果てしない探求心を感じることができた。


ふたり以外のキャスティングはどうでしたか?

 出演を打診した俳優全員が引き受けてくれた。以前の作品では断られることもあったし、5、6日間くらいの撮影ではあえて打診しない俳優もいた。この作品に関しては、主要な俳優たちは引き受けてくれただけでなく、とても反応が早かった。リュミエール兄弟を演じたブリュノ・ポダリデスとドゥニ・ポダリデスは、撮影が1日しかないにも関わらず、すぐにサインしてくれた。オリヴィエ・グルメ、ノエミ・ルボフスキー、クロチルド・エム、フレデリック・ピエロも同様に快諾してくれた。脚本に魅力を感じた以外に、みんなオマールと共演したかったのさ。


ご自身も俳優であるということが、監督をする際に影響しましたか?

 もちろん。自分が監督にしてほしいように進めた。我慢強く、優しくね。僕はぶつかり合う関係がいいとは思ってない。それに、「演出」という言葉もあまり使いたくない。俳優は演技の仕方を分かっている。それよりも問題は、編集時の選択肢を持つために、俳優にさまざまな感情を出させることだ。さらに、僕にとって大事なのは正しいトーンに合わせること。その俳優が正しいカギを手に入れるために僕を必要とした時に、彼を手助けするのが僕の役割さ。すぐに見つかる時もあれば、そうでない時もある。ふたりで力を合わせることが大切なのさ。


この映画で観客に伝えたいこととは?

 これは、ふたりの人間が出会い、共に何かを生み出し、やがて別れていく物語だ。だが同時に、ショコラというひとりの男の解放の物語でもある。そして、これはフランスという国の物語だ。何の罪も責任もなく、ショコラは時代に名を刻み、そして忘れられた。そういう人間は彼だけじゃない。彼について語ることは、僕らの過去を知るための助けになる。今日をよりよく生きるためには、過去を知ることがとても大切だと、僕はいつも思ってる。


ショコラの運命のどんな点に心を動かされましたか?

 ショコラとオマール、僕の人生には似ているところがある。オマールと僕は、「僕らは詐欺師だ!」と言って、笑ったよ。オマールは、今彼の身に起きていることに値する寛容ですばらしい俳優だ。だけど、僕らの世代は、移民の子どもがスターと主役の座を共に担うのを見ることなく育った。約20年間、いつか誰かに「おい! そこで何してる? ここは君のいる場所じゃない」と言われるかもしれないと思ってきた。そして僕はこう答える。「ごめんなさい。僕ならできると言われたんだけど、もう出て行くよ」とね。
 今はもう、そういう騙している感覚はなくなった。だけど、1世紀前に有色人種のアーティストが大成功を収めたことを知って、感動した。それと同時に、悲しくもなった。その功績が何も残されていないからさ。たぶんこの映画がそれを変えてくれるだろう。自分自身の人生についても考えさせられる。自分たちが成し遂げたことのどれほどが後世に残るのだろう?とね。


(オフィシャル素材提供)


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