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第68回ヴェネチア国際映画祭記者会見

『コンテイジョン』
第68回ヴェネチア国際映画祭記者会見

2011-09-04 更新

スティーブン・ソダーバーグ監督、マット・デイモン、グウィネス・パルトロウ、ローレンス・フィッシュバーン、スコット・Z・バーンズ(脚本家)

Toutes nos envies

配給:ワーナー・ブラザース映画
2011年11月12日 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
(C)2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 感染するとたちまち死に至る、原因不明の伝染病が世界規模で爆発的に拡大。一刻の猶予もない中、各国や世界保健機関、研究者・医師らは原因調査とワクチンの開発に乗り出す一方、人々はパニックに陥り、町はあらゆる機能を止め、荒廃してゆく――。

 スティーブン・ソダーバーグ監督の放つ感染ものスリラー『コンテイジョン』が「フオーリ・コンコルソ」部門に参加、記者会見には監督ほか、マット・デイモン、グウィネス・パルトロウ、ローレンス・フィッシュバーンという俳優陣および脚本家のスコット・Z・バーンズが登場した。

 2003年に中国で発生したSARSなど、感染力が強く、決定的な治療法が解明されていない伝染病は現実にも存在しているが、この映画を作っているうちに、ウィルスに対する恐怖感が増してきたというソダーバーク監督。「そういうことは、考え始めると止め度がなくなってしまうものだ。自分より前にこのマイクを触ったのは誰なんだろう、とかね。少なくとも、これまでよりは手を洗うようになったかな。でも、ヴェネチアに来てからは握手ばかりしているけど(笑)。イタリアには飛行機に乗ってやってきたけど、感染しやすいという意味では、それこそ最悪の場所の一つだよ。まあ、僕たちはそういう世界に住んでいるってことだね」。

 現在撮影中の映画『Elysium』のために坊主頭となって登場したマット・デイモン。「これまで受けたインタビューで、必ず最初にされる質問がこの頭のことなんだよね」と、今回の会見でも最初に頭のことを聞かれて苦笑い。
 今回の映画で一番気に入っているシーンは、グウィネス演じる妻が死亡したことを医者から聞かされたとき、トンチンカンな反応をするところだと言う。「これまで数え切れないほど家族に死を告げてきた経験のあるERドクターによると、その知らせを聞いて、まず愕然となるのは普通のことだけど、一方で、あまりに突飛なことなので話をはなから理解できない人たちもいるってことなんだ。だから、僕たちはその後者の場合を採用してシーンを作った」。実際、衝撃な物語の中ではささやかなシーンながら、観客から最も笑いが起きたほど印象的だった。

 一方、冒頭で早々に死ぬ第一犠牲者を演じたグウィネスは、泡を吹き激しく痙攣して死ぬシーンを楽しんだという。「アルカセルツァー(発泡制酸剤)をひと噛みしなくちゃいけなかったけど、難しかったなんてとても言えないわ。楽しかったわよ」。ただし、唖然とするような彼女自身の解剖シーンもあるこの映画は、子供たちには観せられないようだ。「うちの子たちは『ベイブ』でさえ見られないのよ。だから、今回の映画を観るなんて、少なくとも当分は無理ね」。

 実はグウィネスの役は、海外出張の合間に昔の恋人と逢瀬をした場所で伝染病に被患したという設定だった。それについてどう思うかと問われたグウィネスは、「ウィルスによる死が不倫に対する天罰だというのなら、この会見場には3人位しか生き残っていないでしょうね。もしかしたら、もっと少ないかも。だって、ここはイタリアだから(笑)」と機転の効いた答えを返した。「わたしたち人間は過ちを犯すものだわ。わたしは彼女を批判する気にはなれない。間違った時に間違った場所にいただけなんだと思う」。

 ソダーバーク監督お得意のオールスター群像劇ながら、これまでの感染ものにありがちなアクション・特殊効果満載の派手な映画とは一線を画し、世界が死の影の下に急速に荒廃していく過程が、ドキュメンタリーのようなリアルなタッチで淡々と描かれていく。「映画の中で描かれる科学は正確であるべきだった。ウィルスについて語られているシーン、ビジュアル化されているシーンは絶対的にリアルでなくてはいけないし、もっともらしくなくてはいけなかった。内容においてはリアリスティックで、スタイルにおいてはシンプルで明確な映画を作りたいというのが、当初から(脚本家の)スコットと僕が考えていたことだった。さもなければ、この種の映画を新たに作る意味があるとは思えなかったからね」。

 この種の映画における新たな要素といえば、ジュード・ロウ演じる自称ジャーナリストのブロガーの存在がある。一日に数千万単位のヒットがある彼のサイトが発信する情報は、事実であろうと操作されたものであろうと、伝染病並みに世界中に恐怖を浸透させていく。バーンズは、「間違った情報や捏造された情報なども、ウィルスと同じように増殖し、ものすごい勢いで世界中に伝播するものだ」と、インターネット上における情報“感染”にも警鐘を鳴らす。

 ただし、この映画が発信しているメッセージを問われた監督は、「このウィルスはエコロジー的見地によるメタファー、つまり、人間に対する自然の復讐を表現しているだとか、そんなメッセージは一切ない。ウィルスはウィルスだよ」と締めくくった。

 ところで、引退説が流れていたソダーバーク監督だったが、「来週から、男性ストリッパーの映画『Magic Mike』を撮り始める予定だ。その後は、来年2月に『Man from U.N.C.L.E』、6月に『Liberace』を撮り、その後は少し“研究休暇”を取るつもりだ」と、噂を一蹴した。

 『コンテイジョン』はワーナー・ブラザース映画配給で、11月12日より日本公開予定。

(取材・文:Maori Matsuura、写真:オフィシャル素材)


『コンテイジョン』
(2011年、アメリカ、上映時間:106分)

監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
出演:マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、ケイト・ウィンスレットほか


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