
2010-09-24 更新

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第67回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門にノミネートされた三池 崇監督の本格時代劇『十三人の刺客』。夜のプレミア上映をひかえた9月9日(木)、記者会見が行われ、特別上映される「ゼブラーマン」シリーズの会見を終えたばかりの三池監督、主演の役所広司、山田孝之が登壇した。
本作は、1963年に工藤栄一が監督を務めた同タイトル作のリメイク。47年後の今、何故本格時代劇をリメイクしたのかと問われた監督は、「オリジナルは自分が生まれて3歳の頃に創られた映画。父親たちの時代に生まれた映画を、次の世代の自分たちが創ったらどうなるだろうという思いを抱くのは自然なこと。オリジナルにかかわったスタッフの方々に観ていただき、楽しんでいただければいいなと願いながら創った。日本映画が忘れつつある本格的時代劇を創ってみたいと思ったのもきっかけとなった」と答えた。
本作で圧巻なのが、50分にもわたる戦闘シーンだが、創り上げる上でどのような困難があったのか。「正直、大変だった」と監督。「まず、映画用の馬がいない。殺陣ができる俳優も減っている。京都の撮影所の方たちに参加していただき、山形にオープン・セットを作って、自分が斬られるまでは家に帰れないという状況にした。それまでの撮影の常識をリセットして挑んだ。13人の生命力が強い分、アクション・シーンも長くなり、血の量も増えていった。この壮絶な戦いこそが彼らの生きた証だ」と、撮影にかけた意気込みを語った。
その過酷なアクション・シーンを乗り切った役所広司は、「20日間ほど、毎日アクション・シーンの撮影だったので、生傷は絶えなかった。山田(孝之)くんにも、2回くらい斬られた」と笑う。時代劇も殺陣も乗馬もほとんど初めてだったという山田孝之は、「苦労はいろいろあったけれど、日本人にしか出来ないことだからいつかはやりたいと思っていた。いい経験だと思って頑張った」と撮影を振り返る。
13人の刺客たちはいずれもキャラクターが立っていたが、さらに特筆すべきは、極悪非道な暴君を演じたSMAP・稲垣吾朗の堂々たる悪役ぶりだろう。 「吾朗くんはアイドルで、アイドルは悪い役をやらないものなので、彼にとっても本当に意外な配役だったようだ。でも僕には、彼がこの役にふさわしく思えた。10年以上アイドルとして日本の芸能界に君臨しながら、特に吾朗くんは特殊な存在に見える。グループの中ではトップとは言えないし、他の活動を盛んにやっているわけでもない、でも特別な存在で、屈折した役割を担っている。その期待に違わず、彼の存在感がものすごく活かされたと思う」と監督も絶賛。
一方、その暴君を亡き者にしようと集まった13人の刺客を率いる御目付・島田新左衛門を演じた役所広司は、「13人のチームのリーダーとして、命を預けられる男とはどんな人間だろうと考えながら演じた。そう見えるように、というのが、今回自分に課した大きなテーマだった」と言う。
最後に、江戸時代も平和な時代が長く続いたが、この物語には今の平和な日本にも通じるテーマがあると思うかと問われた監督は、「時代を問わず、人々が悩み苦しんでいることはそんなに変わらないと思う。ただ、この映画で日本の観客に気づいてほしかったのは、これは遥か昔の物語ではなく、おじいさんのおじいさんにあたる人たちが生きていた時代が舞台なのだということだった。現代の日本人はあたかも、今の平和は天から降ってきたかのように生きている。自分の父親がどういう想いで生きてきたかということさえ考えなくなってきている。この世界を築いてきた人々の想いに気づくこともできないというのは恐ろしと思ったので、冒頭に広島・長崎に関するクレジットもつけた。話はフィクションだが、とてもリアルに創ったつもりだ。自分自身、なぜ今ここに居るのかと考えると、何も分かっていないことに気付いて戸惑いを覚えた。そうした問いかけから始まった映画だとも言える」と明かした。
同日22時からのプレミア上映は、「ゼブラーマン」シリーズの特集も組まれている三池監督のコンペティション部門参加作品だけあって期待も高かったせいか、始まる前から会場は独特の熱気に包まれ、後半50分の戦闘シーンでは見せ場で何度も拍手が起こった(特に、男気たっぷりの伊原剛志演じる侍は人気が高かった)。
三池監督ファンの期待を裏切らないキッチュな味わいも交えつつ、その圧倒的な迫力と映像美、一瞬たりとも飽きさせないエンターテインメント性、無骨なまでに義と忠に命を懸けた侍たちの姿は観客の心をがっちりとつかんだようで、上映終了後は、興奮に満ちたスタンディング・オベーションが監督一同に贈られた。


(取材・文・写真:Maori Matsuura、三池 崇監督および役所広司の写真のみ映画祭オフィシャル素材)
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