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「スターサンズ映画祭 by プレチケ」DAY1『あゝ、荒野 前篇』トークイベント

2021-08-29 更新

河村光庸プロデューサー

スターサンズ映画祭starsands-ff

 『ヤクザと家族 The Family』、『MOTHERマザー』、『宮本から君へ』などを話題の映画を送り出し、特に『新聞記者』では日本アカデミー賞作品賞を含む6冠を達成。その年の映画賞を総なめにし、一気に注目度が上がった映画会社スターサンズ。それにとどまることなく、『パンケーキを毒見する』など、現代社会への問題提起を含んだ挑戦的なエンタテインメントを続々と送り出し、独自のファンを形成しつつある。

 日本のエンタテインメント業界では異例といっていい強烈な色彩を放つスターサンズ。これは代表プロデューサーである河村光庸をはじめとしたスタッフの映画づくり・企画に対する一貫した想いやスタイルに共感する映画ファンに拡がっている稀有な例だろう。

 この度、2021年最大の注目作として映画メディアや映画ファンの話題を集めているヒューマンサスペンス『空白』(9月23日公開/古田新太、松坂桃李主演・𠮷田恵輔監督)の公開を記念し、このスターサンズという映画会社を、数々のスターサンズ映画たちと、映画に関わった人たちと共に振り返り、映画ファンとの交流のための映画祭を、国内最大級の映画レビューサービスFilmarks主催、映画館での上映プロジェクト「プレチケ」と共同開催。Filmarks内で募集したアンケートをもとに、映画ファンが映画館で観たい作品を募り、スターサンズ代表作の数々を上映する。

 この度、スターサンズ映画祭初回となる8月27日(金)に、『あゝ、荒野 前篇』が上映。上映前に河村光庸プロデューサーが登壇し、『あゝ、荒野』の制作秘話やスターサンズの映画制作の魅力を語る舞台挨拶を行った。


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分断、孤立、貧困――
『あゝ、荒野』は2021年、東京オリンピック後の世界を描いた予言の映画!?

 他の会社では作れないような、個性に溢れたスターサンズ作品はどのようにして生まれるのか。『あゝ、荒野』のプロットも河村が手掛けているが、なぜ寺山修司原作を映像化について聞かれると、河村は「寺山修司は、劇団『天井桟敷』の主催者でもあり、カンヌ国際映画祭に3度出品されている映画作家。寺山さんはいろいろな顔を持っており、『あなたの職業は何ですか?』と問われたら、『職業は寺山修司です』という逸話もあるほどで、彼はまさに言葉の天才。俳句、短歌をたしなむ俳人、放送作家、エッセイストといろいろなことをやりながら、競馬やボクシングの評論家でもある。そういった活動を土台に作家となり、舞台が終わると映画作家になる。彼の大ファンだ、一番知っているという方々も多くいるが、実をいうと彼のことを誰も知らないんじゃないかという程に謎に満ちていて、私は昔からそういった点に興味を持っていたんです。そういった中で寺山さんの創り出す世界観、世界観というより言葉を通しての表現に対して、今寺山さんが生きていたらということをいつも考えていたんです」と前後編約5時間にも及ぶ超大作となった作品の原作を書き上げた寺山修司に対する思いを語る。


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 「『あゝ、荒野』は2017年公開作だが、2021年という未来を物語の舞台にし、貧困やテロなど昨今の世の中を予言したような内容になっている」とMCからの指摘に、河村は「寺山修司は一貫して独りぼっち、“孤独”の人。かつて、孤独とは誰もが通過する青春、ほろ苦い経験、そういったことから自分自身というものを考え、それを経て自立していく経過であり、よく言えば美しいもので、人生を育んでいく経過であると思うんです。しかし、現代の孤独と言うのは果たして何なのか? むしろ美しいものではなく、特に若い人にとって孤立し、分断という社会の構造になって行ってたのではないのかと。だから先ほど言ったように『寺山修司がいま生きていたら』と言いましたが、彼は“孤独”を売り物にしていたけど、現代の孤独とはなんなんだろうかと。この映画を観ていただければご理解いただけると思いますが、孤独をテーマにしていると思います」と映画の舞台となった年代やテーマにも言及。さらに昨今私たちがよく耳にする“分断”という言葉。そして舞台が2019年の東京オリンピック後の世界を映し出し、冒頭から貧困やテロを描かれていて、コロナ禍のことは描かれないにしろ今の日本を表すような予言の書のようにも感じたとの言葉に、「社会が分断化され、孤立していく人が増え、例えば今回のコロナはみんな平等に誰でもかかってしまうので、個人個人の判断が非常に大事になっていく中で、集団で動かされていく社会ではなくて、個人が大切な社会として認識されていくのではないかと勝手に思っていたら、やっぱり案の定、コロナ禍によって何が生まれたかといいますと、分断や差別などあらゆる問題が噴出しそのような社会になってしまった」と語った。

 ここで、主題歌を提供したロックバンドBRAHMANのフロントマン、TOSHI-LOWからのビデオレターがスクリーンに映され、「『あゝ、荒野』の主題歌をやらしてもらったんですけれども、自分自身そんなに映画を観る人間ではないし、主題歌をやったことがなかったのですが、寺山修司さんが好きで、彼の作品ということで、主題歌をやらしてもらいました。できた映画を観て、正直音楽の世界しか知らない自分でしたが、何て役者がかっこいいんだろうと思いましたし、寺山修司の難解でコラージュを即興音楽のように作り上げていて、作品を丁寧に紐解いて、今の時代に丁寧に当てた、監督とか、映画を作っている皆さんの熱意みたいなものがめちゃめちゃ伝わってきて、作品自体すごくかっこよく見えて、最終的に自分が敬愛する寺山修司さんの作品に入れる、作品の血になれたっていうのが自分へのご褒美以外の何でもなく喜びしかないです。本編を観て、最後に流れる主題歌を聞いていただき、その血を感じていただければ嬉しいです」と主題歌を担当した喜びのコメントが流れた。


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 日本アカデミー賞最優秀男優賞を獲った菅田将暉ほか出演者の素晴らしさにも注目が集まる本作で、韓国出身の役者ヤン・イクチュンについて質問されると、「(ヤン・イクチュンは)バリカン健二という吃音のボクサーになっていく人物を演じていますが、彼の主演・監督作『息もできない』を買い付け、配給してから大変親しくしていて、ヤン・イクチュンの才能と表現、そこからスタートし、彼をイメージしてプロットを進めていきました」とキャスティングについて説明。前篇・後篇合わせて5時間もの長尺な作品になったことについて、「元は配信作品として6話ぐらいで考えていたが、やっているうちに『これ配信じゃもったいないな』と思ってしまい、前後篇といえどもすさまじく長くなってしまった」と苦笑。「映画を撮影していると奇跡的なことが起こるんです。全ての作品で(奇跡を)感じています。自分で制作しているんですが、キャストやスタッフが情熱をもって作品にのめりこんでいくと、奇跡と感じることがいくつもありました」と奇跡を実感できる映画制作の魅力を語る。


“現代社会を切り取る”
『新聞記者』『ヤクザと家族 The Family』そして『空白』へ至る、スターサンズ映画の原点

 スターサンズの作品は現代社会というものをいかに物語の中に映し出すかが特徴。『あゝ、荒野』がまさに契機になった作品ではないかなというMCからの言葉に、「まさしくそうで、私は社会をどう切り取っていくかを一つのテーマとして企画の柱にしています。現代社会という“今”をどう描くかは、作品作りの上でやっていかなければならないと大切にしている点で、寺山さんのアイデアと発想を現代社会にもってきたというか、何十年も前に書かれた寺山修司の原作を現代風にアレンジした理由はそこにあります。『あゝ、荒野』はそういった思いもあって生まれた作品です」と振り返り、この『あゝ荒野』を契機として、そのあと『新聞記者』、『ヤクザと家族 The Family』、『パンケーキを毒見する』、そして最新作の『空白』とへ繋がる、一貫した作品作りに対する思いを熱く語った。

 河村は自身が掲げる「映画は自由であるべき」というテーマについても語り、「インディペンデントなので、大手の映画会社ではいろいろな制約によりできないことを自然にやってきただけなんです。制約そのものを取っ払わないと、新しい映画はできないんじゃないかと思っています。今年1月に公開した『ヤクザと家族 The Family』など、皆さんが『え?』って思うような作品を生み出していきたいですね。今上映している『パンケーキを毒見する』も短期間であっという間に作った映画ですが、ぜひ観て欲しいです。また情報解禁したばかりですが、『空白』の公開後の10月8日から有村架純さん、志尊 淳さんが出演するドキュメンタリー映画『人と仕事』も公開します。この作品は、コロナ禍で撮影がなかなかできない時期だったので、ドキュメンタリーを2本制作しました。戦前、映画はテレビの代わりでもあったが、戦時したでは規制されたり国策映画が作られたりして自由が失われた。現代でも、テレビだとスポンサーへの気遣いなどがあり、本当の意味で自由なのは映画だけ。自由がなくなれば、映画作りは止める」という熱い言葉でトークは締めくくられた。


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スターサンズ映画祭 by プレチケ

 ■主催:Filmarks
 ■提供:スターサンズ
 ■協力:KADOKAWA
 ■開催時期:2021年8月27日(金)~9月1日(水)



(オフィシャル素材提供)



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