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舞台挨拶・イベント

トップページ > 舞台挨拶・イベント > 『第40回ぴあフィルムフェスティバル』

「第40回ぴあフィルムフェスティバル」開幕!
黒沢 清監督登壇

2018-09-11 更新

黒沢 清監督

第40回ぴあフィルムフェスティバルpff
© PFF General Incorporated Association

 1977年にスタートし、今年で第40回を迎えた「ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」が9月8日に国立映画アーカイブで開幕した。

 初日からメインプログラムとなる「PFFアワード2018」のほか、豪華ゲストを招いてのスペシャルプログラム『女も男もカッコいい!今こそアルドリッジ』、『追悼 たむらまさきを語り尽くす』と、この日限りのスペシャルな上映が目白押しで、中にはチケットがソールドアウトの回も!

 開催前から大きな話題を集めていたロバート・アルドリッチ監督特集の『キッスで殺せ』の上映後には、アフタートークで黒沢 清監督が登場。生誕100周年を迎えた巨匠の魅力について語った。


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 満席の会場の大きな拍手に迎えられて登壇した黒沢監督は、自身とアルドリッチの出会いをこう明かした。「高校から大学に進学する1970年代半ばとのこと。『ロンゲスト・ヤード』と『北国の帝王』を観て、瞬く間に魅了されました。その後、『ハッスル』や『合衆国最後の日』なども観たが、この2作品は当時の僕にとって別格でした。その魅力はめっぽう面白いに尽きる。男と男のガチンコ勝負というか、バカみたいなことを本気でやる男たちの姿がこれほど感動的になることに驚きました」と語り、「当時、1970年代は、ジョン・ウェインの西部劇やチャールトン・ヘストンの歴史劇みたいなものは古典としてはアリでした。ただ、そういうマッチョな男はすでに時代遅れの時代に突入していました。当時、男の闘いを描いた作品はありましたけども、男同士の闘いというフレーズはすでに古臭く、それはみんな分かっていたので、サム・ペキンパーはやけにウェットにノスタルジックに、リチャード・フライシャーは聡明に、ドン・シーゲルは冷徹に扱っていました。その中で、アルドリッチは、誰もが古色蒼然に違いないと思っていた本気の男同士の闘いを目の覚めるような形で描いていて僕はびっくりした。しかも、男たちの闘いはくだらなく、勝っても負けてもどうでもいい。その無目的で無意味なところが1970年代だった。ばかげたことを目の覚めるような痛快さでアルドリッチは描いていた。これはある意味、画期的で本当に面白かった。当時の僕は娯楽映画はここにあると思いました」と当時を振り返った。


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 今回上映された、アルドリッチ作品の中ではカルト的な人気を得ている1995年製作の『キッスで殺せ』については、「とんでもない映画を観てしまったというのが率直な感想ではないでしょうか」と切り出すと、「ただ、何がどうとんでもなかったのか説明してみろといわれると、そう簡単に言葉が出てきません」と続け、今回で見るのは5回目だが「説明できない大きな要因にあげられるのが、物語がよく分からないこと。結末はすでに分かっているので、今日はラストから逆算して観ていったが、やっぱり物語の全貌がつかめるようでつかめない。マイク・ハマーという探偵が一貫して謎を追っている。それは分かるのだが、それ以外のことがほとんど分からない。彼がなぜ謎を追うのかも分からない。でも、(こちらの)目をくぎ付けにする普通じゃない瞬間がいくつもある」と語ると同調するように会場からはちょっとした笑いが。そして「正直言って、この映画を娯楽映画の巨匠、アルドリッジの代表作にしていいものか迷います」とまずはこう評しました。

 続けて同作がフィルム・ノワールの傑作と呼ばれていることから、「アメリカのある種の低予算映画、多くはアメリカの探偵小説をもとにしていて、探偵が謎を追う構造、当時の第二次世界大戦やのちの赤狩りの時代、暗い世相を反映させている」とフィルム・ノワールの定義を示した上で、「フィルム・ノワールで扱われる謎は、実際はもっと分かりやすい。たとえば欲に直結した金や宝石、麻薬そういった類が多い。そして、誰が本当に悪いのか、悪いのは誰なのか、悪の正体を暴くのではなく、善悪の区別がつかなくなり、本当の善悪など存在しないということがこのジャンルでは重要。その中で、『キッスで殺せ』は特別といっていいでしょう。通常の娯楽映画が扱うことを避け、フィルム・ノワールという特別なジャンルの映画でさえ、その複雑な物語の中で暗示的に示すしかない悪の本質、あるいは死そのもののイメージをこれでもかというぐらい露骨に直接的に鮮烈な映像として観客の脳裏に焼き付くような形で言及した。それが『キッスで殺せ』かもしれない。これほどまでに露骨に謎が目の前に露呈する映画はほかにない。これは謎をめぐって人が右往左往するのではなく、誰が悪者なのかという結末の映画でもない。謎そのものが、悪そのものが最後に目の前にその正体を現すという映画。もはやフィルム・ノワールでなくなっていると言っていいかもしれない。こんな途方もない映画は、アルドリッチのフィルモグラフィーにも、世界の映画の歴史においてもほとんど見当たらない」と特異な傑作と論じた。


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 また、黒沢監督は自身の作品への影響にも言及。「僕自身も主人公が謎に突き進んでいく映画を何本か撮っています。ただ、恐ろしいので主人公を探偵にしたことはありません」とちょっとしたエピソードを明かした。

 この黒沢監督のトークは当初の予定した30分を超えて40分に。熱の入った解説に会場は聞き入った。なお、今回見逃してしまった人にもまだチャンスが! 『キッスで殺せ』は19日にもう1度上映される。

 なお、この日、「追悼 たむらまさきを語り尽くす」のほうの上映には青山真治監督と仙頭武則プロデューサーが登場。こちらも熱いトークが繰り広げられた。豪華ゲストが続々と登場して華やかに幕を開けた今年のPFFは、まだ始まったばかりだ。今月22日まで多様なプログラムが展開されるので、ぜひ足をお運びいただきたい。


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映画祭「第40回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」

 ■会期:2018年9月8日(土)から22日(土)まで ※月曜休館

 ■会場:国立映画アーカイブ(旧・東京国立近代美術館フィルムセンター)

 ■内容:コンペティション部門:「PFFアワード2018」
     招待作品部門:生誕100年のロバート・アルドリッチ特集「女も男もカッコいい!今こそアルドリッチ」
     人気映画人が伝授するPFFスペシャル講座「映画のコツ」
     今年5月に急逝された伝説のカメラマンたむらまさきさん追悼企画「たむらまさきを語り尽くす」

 ■主催:一般社団法人PFF

 ■公式サイト: https://pff.jp/40th/tickets.html (外部サイト)


 ※前売券は、各上映の2日前まで販売されます。
 ※当日券は、前売券完売の場合も一定数確保し必ず販売されます。
 (長瀬記念ホール OZUの上映回は50枚ほど、小ホール上映回は30枚ほどチケットが確保されます)。
 ★今年は学生当日500円!


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(オフィシャル素材提供)



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