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トップページ > 最新ニュース > 『桃太郎 海の神兵』デジタル修復版 第69回カンヌ国際映画祭クラシック部門ワールド・プレミア

『桃太郎 海の神兵』デジタル修復版
第69回カンヌ国際映画祭クラシック部門
ワールド・プレミア

2016-05-15 更新

momotaro © 1945/2016 松竹株式会社


momotaro 2016年5月13日(金)15:10(現地時間)、カンヌクラシック上映会場Salle Bunuelにて、日本初の長編アニメーション『桃太郎 海の神兵』(瀬尾光世監督、1945年公開、英題:MOMOTARO, SACRED SAILORS)がワールドプレミア上映された。上映前に、高橋敏弘(松竹株式会社 映像副本部長 取締役)と中村謙介(株式会社IMAGICA アーカイブグループ レストレーションスーパーバイザー)が登壇し、200人以上、ほぼ満席に近い観客を前に、舞台挨拶した。観客の反応は非常に良く、大きな熱気に包まれ、盛況のうちに上映は終了した。


【舞台挨拶内容】

高橋敏弘: 本日は、瀬尾光世監督の『桃太郎 海の神兵』デジタル修復版にお越しくださり、ありがとうございます。
 2012年より、木下惠介監督の『楢山節考』、小津安二郎監督の『秋刀魚の味』、大島渚監督の『青春残酷物語』、溝口健二監督の『残菊物語』、そして本年、『桃太郎 海の神兵』まで、5年連続でカンヌクラシックスに松竹作品を選んでいただき、大変光栄です。
 特に日本映画にも造詣の深いディレクター、ティエリー・フレモーさん、クラシックス担当のジェラルド・ドゥシュソワさんに感謝いたします。
 松竹は、昨年、松竹120周年と終戦70周年を機に、第二次世界大戦末期、海軍省の依頼で製作し、1945年4月に公開された日本初の長編アニメーションであるこの映画のデジタル修復に着手し、本日を迎えました。
 戦時下の国策映画ですが、手塚治虫さんをはじめ、その後の日本のアニメーションに大きな影響を与えた歴史的に非常に重要な作品です。
 なお、映像監修には『母と暮らせば』『家族はつらいよ』など山田洋次監督作品のキャメラマンで、小津作品や大島作品のデジタル修復に携わった近森眞史さん、映像監修協力に、『虹の豚』や『もののけ姫』などスタジオジブリ作品の撮影監督で知られる奥井 敦さん、音響修復は世界的に実績のある米国のAudio Mechenicsにお願いし、アニメーション映画特有の撮影環境を考慮、想像し、今回の修復にあたりました。
 詳しくは、映像修復を手掛けた日本を代表する現像所でもあるイマジカの中村さんから、修復の概要をお話しいただきます。ありがとうございました。

中村謙介: IMAGICA Restoretion Supervisor中村です。まず、『桃太郎 海の神兵』という日本のアニメーションの歴史に残る作品に携われたことを感謝いたします。
 我々IMAGICAは、1935年から続く日本でももっとも歴史のある商業現像所としてレストレーション事業にも力を入れており、先ほど高橋さあがおっしゃられた4作品をはじめ、現存する日本最古のアニメーション『なまくら刀』や日本最古の動画『紅葉狩』など数多くの日本映画の修復を手掛けてきました。今回は画の部分のみを担当しましたが日本初の長編アニメーションであるこの作品は我々にとって、得な分野でありつつも非常に挑戦的なものでした。
 本作は、松竹さまが保有されていたマスターポジから4Kスキャンを行い、2Kで修復をいたしました。マスターポジの状態は良かったものの、複製元に起因する画の状態は非常に悪いものでした。キズ、汚れ、フリッカー、裂け、明らかにコマが欠損している箇所も多くありました。
 また、現代の日本アニメで主流の画の一部分のみを動かす手法ではなく、それぞれ独立したキャラクターを描く手法が用いられていました。その点では実写のような動きの難しさと、アニメーション特有のセルに付着したゴミやゆがみといった症状が混在し、より修復を困難なものにしていました。
 そのため、我々は自動処理ではオリジナルの画を損なってしまう可能性が高いと判断し、手作業に多くの時間を費やしました。フィルムがひどく裂けている箇所では、1秒分を作業するのに3時間を要する箇所もありました。
 しかしただ現代的に見やすいものにするのではなく、当時の制作環境、意図を考慮し、あえてそのまま残したところもあります。70年前、当時の人々が劇場で観たはずのイメージを再現しました。1945年の日本に思いをはせながらご覧いただければ幸いです。ありがとうございました。


【特別コメント】

ジェラルド・ドゥシュソワ(カンヌ国際映画祭カンヌクラシックス担当): 我々、カンヌクラシックは、松竹が修復作品のワールド・プレミア上映のために払っている努力に対し、深く感謝します。毎年、感銘を受けるのは、質の高さに加え、松竹と修復チームの真摯なプロフェッショナルイズムと情熱です。
 2016年の作品選択は、大胆にも、1945年のアニメーション映画でした。興味深く、多様性があり、しかもプログラムの幅を広げてくれる作品ですし、歴史的、文化的あるいは芸術的特質は言うまでもありません。


【カンヌクラシックスとは】

 カンヌ国際映画祭の一部門で、映画についてのドキュメンタリー映画や、世界的なクラシック映画の修復版を上映。
 日本映画では、2005年『父ありき』(小津安二郎監督)、2006年の『風の谷のナウシカ』(宮崎 駿監督)、2008年『ツイゴイネルワイゼン』(鈴木清順監督)、2012年『楢山節考』(木下惠介監督)、2013年『秋刀魚の味』(小津安二郎監督)、2014年『青春残酷物語』(大島 渚監督)、『東京オリンピック』(市川 崑監督)、2015年『残菊物語』(溝口健二監督)、『仁義なき戦い』(深作欣二監督)、『乱』(黒澤 明監督)に続く選出。

『桃太郎 海の神兵』

英題:MOMOTARO, SACRED SAILORS

 (1945年公開、日本)

■ストーリー
 富士山麓の村で休息を終えた、サル、イヌ、キジ、クマが南方へ行く。隊長・桃太郎の指揮下、鬼ヶ島へ飛行隊が向かう。大空に咲く、数々のパラシュート。作戦が成功し、桃太郎たちが瞬く間に島を制圧した頃、村の子供たちは落下傘ごっこをして、歓声を上げ、富士山に向かって走り去る。

■監督:瀬尾光世
■後援:海軍省
■製作:松竹株式会社
■構成:熊木喜一郎
■脚本・演出:瀬尾光世
■影絵:政岡憲三
■音楽監督:古関裕而
■作詞:サトウハチロー


『桃太郎 海の神兵』デジタル修復版

■製作:松竹株式会社
■映像監修:近森眞史
■映像監修協力:奥井 敦
■制作:株式会社松竹映像センター
■映像修復:株式会社IMAJICA、株式会社IMAJICAウェスト
■音響修復:オーディオメカニックス

 © 1945/2016 松竹株式会社


『桃太郎 海の神兵/くもとちゅうりっぷ』デジタル修復版 ブルーレイ、DVD

2016年8月3日(水) 発売/発売・販売:松竹株式会社


ジャパン・プレミア

2016年夏(予定)、現在準備中。




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