インタビュー・記者会見等、映画の“いま”をリポート!

Cinema Factory

Cinema Flash




広告募集中

このサイトをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
Windows Madia Player ダウンロード
Windows Media Playerをダウンロードする

舞台挨拶・イベント

トップページ > 舞台挨拶・イベント > 『めめめのくらげ』Apple Store, Ginzaトークショー

『めめめのくらげ』
Apple Store, Ginzaトークショー

2013-03-24 更新

村上 隆、氷川竜介(アニメーション研究家)

めめめのくらげmememe

配給:ギャガ
4/26(金)TOHO シネマズ 六本木ヒルズ他全国順次ロードショー
© Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 世界のトップアーティストとして活躍する村上 隆がはじめてメガホンをとった映画『めめめのくらげ』(4月26日全国公開)。震災後の日本を舞台にファンタジーの世界を描き出すジュブナイル作品『めめめのくらげ』は、実写とCGを融合し、なんとCGカットだけで約1000カット以上という、今までの日本映画にはないスケールと世界観で贈る注目作。
 3月20日、村上 隆がApple Store, Ginzaで行われたMeet the Filmmakerに登場。アニメーション研究家・氷川竜介と対談形式で、実写とCGを交えて紡ぎ出す独創的な映画の見どころや制作秘話をたっぷり話した。

 『めめめのくらげ』は当初CGアニメーションのタイトルで約10年前CGスタジオを設立する際に相談していた相手が氷川竜介だったという村上 隆からの紹介とともに対談形式でのトークショーがスタートした。

氷川竜介: 最終的には実写とCGになったんですけど、やはり村上さんはアニメの比重が大きかったんですよね。

村上 隆: 氷川さんの展開されているアニメ評論のフィールドからとても影響を受けていました。金田伊功さんというアニメーターの方のモードが偶然にも日本の狩野派に酷似していること、日本の絵画製作においての空間成立方法とアニメーションに観られる空間の成立方法が似ています。もともとアニメは好きでしたが若い頃にアニメ製作者にはなれなかったので、30歳になって僕の現代美術の世界と金田伊功さん及び80~90年代の日本のアニメーションのモードを一本の線でつなげようと思ったのが「スーパーフラット」だったんです。アニメのモード、日本のオタクのフィギュアのモードを現代美術と合体させて発表してきたんですよね。

氷川竜介: 全世界に現代美術があってアニメがそこに接続できることはとても新鮮で、刺激的でしたね。

村上 隆: 今でこそ“クール・ジャパン”で戦後のサブ・カルチャーを重要な文化として世界に打ち出そうということはありますが、僕らのアニメ・ファンの世代は日陰な感じで、表立って言うと「根暗」と言われていたんですよね。そこからの8mmフィルムのようなアニメーションを作ったりと若い子の間で広まって、インディペンデントとプロの境界が曖昧になりましたよね。僕はNYに行ったりしていたので、それの派生が外から見ると大きなムーブメントに見えてきたんです。そこを僕が部分的につまみ出したので色々批判はありますが、アニメーションや特撮が好きだったので横目で見ながらまた片足を突っ込んだり、美術の世界とつなげたりしてきてかれこれ15年ぐらい経ちましたね。

氷川竜介: ではどうして実写とCGで映画を作ろうと思ったのですか?

mememe村上 隆: 当初はCGアニメーション・テレビ番組をつくろうという話になり、15人で作り始めた。でも実際には進まず、今は60人になったけどそれでもまだまだ。というわけで、アニメを作ることは予想をはるかに上回って大変。キャラクターを演技させるのは技術力のある人間たちの集合体がなければ生まれないということは分かってきた。毛並みの羅列やモーションだけでは難しいと実体験で最近分かってきた。スプラッター・ムービーを作っている製作の西村さんと出会い、実写を提案されたんです。その時はめめめではなく、ホラーっぽい作品にしようとしたが、僕自身がホラー好きじゃないので脚本の段階でどんどん変わってきて、煮詰まってきちゃって。その時、3.11があって西村さんに電話をしてこの状況ではできないと断ろうとしたら、西村さんが「あの企画、今だからやりましょうよ」という話をしてくれました。それで、企画2ヵ月、夏に撮影と決めたんです。でも企画段階で世界観が煮詰まってしまい、昔の企画書を掘り出してみて「10年前から大事にしていた企画なんで今回みたいに試験的に作るものじゃないんですが」と言ったら、西村さんたちに「映画はそういうことじゃ出来ないんだよ」と説教されて全部さらけだすことで作り始めたのが、『めめめのくらげ』の実写だったんです。

氷川竜介: それで撮影はじめられたんですね。(テーブルの上のキャラのぬいぐるみを見て)このキャラクターは?

村上 隆: 元々特撮とマペットの映画のつもりだったんです。実は、くらげ坊は、アニメの企画段階ではねずみ男をイメージしていて、恐ろしげで魔界へ誘う案内人でした。実写でやりたいと言ったが、西村さんに「スプラッター・ムービーを作る僕らがいうのはなんですが、怖いですよ」と言われ、僕が描いているファンタジーにはならないので可愛いくらげ坊になりました。るくそーは実は別のキャラクターの名前と間違えて企画段階で伝えたのが、そのまま脚本になり今に至ります(笑)。このキャラは最初の名残を残して着ぐるみなんです。

氷川竜介: このキャラが主人公とヒロインのふれんどなんですよね。一応、BOY meet GIRLな話ですよね?

村上 隆: アニメだとこのぐらいの子供たちがでてくるんですが、実写だとあまりないなと思ったんです。アニメの世界観のように子供たちがドタバタする世界観を作りたかったんです。

氷川竜介: 正解だと思いますよ。ステレオタイプではなく、昔見たシチュエーション・コメディっぽいというか。こういう子供たちがまだいるんだと新鮮に見えたんですよね。

村上 隆: 映画を作るにあたって参考にしたのは、自分自身も幼少のころに夢中になっていた「悪魔くん」「河童の三平」でした。その子たちが日本の震災の世界をドタバタと動き回るイメージがあったんです。

氷川竜介: 震災も物語上のキーワードになっていますね。

mememe村上 隆: そうですね。短編で撮影1ヵ月でサクッと終わらせる予定でしたが、2年以上たってしまった。2年以上同じ作品に関わってくると、自問自答するようになり、色々発見することがあったんです。日本の混沌とした状況は、僕らの子供のときと少し似てますね。僕の子供のころは世界が汚染されていって抗えない時代を生きているという絶望感があったんです。でも震災の前はそれがなくなったのに、震災後は一変して戦々恐々とした毎日を過ごしています。世の中の構造が似ていて、自分が知っているドラマを別の形でリアリティを持ってはきだせるんじゃないかと思ったんです。

氷川竜介: 村上さんだからアーティスティックな感じかと想像していたらドラマ感があり、メッセージをすごく感じましたね。

村上 隆: 日本が持っている問題とそこから自力では逃げ出せない子供たちの活躍というか中心にすることで、日本を勝たせればいいなと欲が出てきたんですよね。ポス・プロのときに撮ってないCGがたくさんあることに気づき、脚本も変え、3ヵ月前に音楽もオープニングも変え、濃度が上がって自分が作りたいものに近づいていっていると思います。パート2を撮っていたら1の不完全な部分も分かり、1ができたんじゃないかと思う。作家のパッションも伝わったんじゃないかな。

氷川竜介: 演技指導もされたんですよね?

村上 隆: 自分の苦手な部分は共同作業と脚本なんです。どうやってこなせばいいかと思っていたのですが、手を取り足をとり教えてくれました。主人公の選択と主人公のキーになる演技付けはしました。あとはカメラワークと文法なのでそれを踏襲した形になっています。

氷川竜介: CGの話も掘り下げたいのですが、本当は全部で何カットですか?

村上 隆: アニメーション部分は800~900なんですが、修正が多くて。1シーンがうまくいくとそれを軸に全部を変えたくなるんですよね。戦闘シーンは2年弱やっています。スタッフからは、「村上さんの頭の中アニメですよ。実写じゃない。そのままやると嘘くさくなるから」と言われて、でもやりたくなる僕の意見をCGスタッフが汲み取って中和させることが大変でしたね。

氷川竜介: この世界は子供が本当に実感してる感じがいいですね。

村上 隆: 『未知との遭遇』を観たときに、今ままで信じてなかったUFOを本当に信じてしまったんです。子供たちにもそういう気分になってほしいなと思ってますね。

氷川竜介: どんな方に観てもらいたいですか?

村上 隆: メイン・ターゲットはハイ・ティーンから、広く大人まで観て欲しいですが、作品の本質は子供たちにむけたメッセージを作っているつもりですので、親子、また小学生にも見てもらいたいですね。日本の混沌とした中であれはなんだったんだろうと親子で話をしてもらえるといいですね。

氷川竜介: 個人的には女性にも受けるんじゃないですか? 先日のティーチ・インでくらげ坊の着ぐるみに可愛いと群がるOLを見たり、今は『テッド』が女性受けして大ヒットしているじゃないですか。そこにつながる気がするんですよね。

村上 隆: フッテージでも女性の方はほろっと泣いてくれて、livetuneも泣けるし、くらげ坊とまさしの関係は女性は感動してくれますね。

氷川竜介: キャラクターが可愛いし、アニメ映画に近いのでは?

村上 隆: アニメの感覚というか、昔からアニメを見ていて動体視力が鍛えられているんです(笑)。細かいことが気になるのが現場を困らせている原因なのですが、普通の監督や政策委員会システムなど気にしなくてもいいので、スーパー個人製作なので自分としてはこれ以上できないというところまで詰めてやっています。自分が納得いかないところはないところまでやっています。

氷川竜介: 初めて映画を創ってみてどうでしたか?

村上 隆: 宮崎 駿さんが作品を作ると1年間休むという話を聞いて、創れよーと思っていた。この世と映画の世界が混雑して若干鬱になってしまうんです。そういうことかと実感しています。夢にも出て、フラッシュバックする、とここ3ヵ月ぐらい頻繁にでてきて、その現象を体験しています。前後不覚になる新しい体験。それは映画ならではの体験ですね。彫刻ではシステマチックに創っている。映画ではメンタリティの部分でコントロールできずに大変ですが、うまくオーガナイズしたいと思っています。

氷川竜介: アーティストとしてのこだわりは?

村上 隆: 今まで気にしてなかったのですが、音のこだわりが異常にあったと初めて気づきました。音響、聞こえないヘルツも気になって、次はそこにこだわりたいですね。キャラの気持ちを伝えるための手さばきとして音楽がこれほど気になるとは思わなかったので、非常に面白かったですね。

■一般の方々からのQ&A

: キャスト等で悩まれたことは?

村上 隆: 撮影そのものは楽しくて1ヵ月夢のように過ぎたのでなかったです。役者が演技してくれて情報量が多いんです。すごくお得~、完成度上がる!と思ってすごく楽しい経験でした。パート2は欲が出てきたので、役者さんとも話して進めました。

: 初音ミクの印象や出会いは?

村上 隆: livetune.KZさんと台湾の芸祭で出会ったんです。そこから映画の主題歌を決める時に、仮編集の段階で「Last Night, Good Night(Re:Dialed)」を仮でつけてくれたら、はまったので主題歌に決定した。ミクが好きよりはプロジェクトのひとつのとして親近感のあるものになってきたと思います。

: 映像制作で驚いたことは?

村上 隆: クリーチャーの動きがそこにいそうだなというところまで詰められるのでショッキングなことでしたが、そこまでわかるともっとリアリティを追求したいと思いましたね。でもそこまで技術が上がっているとは思ってなかったので衝撃的でした。

: 映画やアニメ業界をみてコネクトされたものは?

村上 隆: 映画一本は非常に想像を絶するいろいろな人たちが合体しなくてはいけないことが分かった。プロデューサーの立場の大切さを実感しました。

氷川竜介: 最後にメッセージを。

村上 隆: 自分のテリトリーでは100%やっています。ジュブナイルでファンタジーで特殊効果を使っている作品はあんまりないので、新しい体験の作品になっています。アニメの予備知識のない人にとっても未体験名作品になっていると思います。


(オフィシャル素材提供)


関連記事

Page Top