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2012-10-17 更新
原題:Tatarak第二次世界大戦下、ソ連軍の捕虜となった多くのポーランド将校が虐殺された「カティンの森」事件。東西冷戦下で永らくタブーとされていた悲劇を描く映画『カティンの森』(07)は、文字通り、ポーランド映画界の巨匠アンジェイ・ワイダ監督の集大成ともいうべき壮大な歴史作品であった。
この一大叙事詩ともいえる渾身のライフワークの後に、休む間もなくワイダ監督が製作に入り、完成させた本作『菖蒲』は、前作とは打って変わってみずみずしい抒情に満ち、人間の根元的なテーマである「生と死」をとおして、生きることの源泉に触れた文芸映画の傑作である。
「菖蒲」の原作は、名作「尼僧ヨアンナ」で知られるポーランドを代表する作家ヤロスワフ・イヴァシュキェヴィッチの同名の短篇小説である。ワイダ監督は、この小説がもつ深遠なテーマを、映画芸術として見事に昇華させ、あらためて自身の限りない力量と才能を世界に知らしめた。そして2011年ベルリン国際映画祭では、多くの映画人の称賛を受け、「映画芸術の新しい展望を切り開いた作品」に授与されるアルフレード・バウアー賞に輝いた。
ストーリーみずみずしい光を放つ大河を望むポーランドの小さな町。その町の医師と、妻のマルタ(クリスティナ・ヤンダ)は、長年連れ添ってきたものの、ワルシャワ蜂起の際、ふたりの息子を亡くしたことで互いに距離ができてしまっている。そんななか夫は、自身の診断で妻が重篤な病状であることを知るが、妻へは告白できずにいた。
春が終わり、夏が訪れようとしていたある日、マルタは川岸のカフェで、美しい青年を見かける。彼との出会いで、マルタは失ってきたものを反芻し、心ざわめく……。
(2009年、ポーランド、上映時間:87分)
キャスト&スタッフ
監督:アンジェイ・ワイダ
出演:クリスティナ・ヤンダ、パヴェウ・シャイダ、ヤドヴィガ・ヤンコフスカ=チェシラク、ユリア・ピェトルハ、ヤン・エングレルトほか
配給
紀伊国屋書店、メダリオンメディア
10月20日(土) 岩波ホールにて公開(全国順次公開)
オフィシャルサイト
http://shoubu-movie.com/