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記者会見

トップページ > 記者会見 > 『エグザイル/絆』来日記者会見

来日記者会見

2008-12-05 更新

アンソニー・ウォン、フランシス・ン

エグザイル/絆

配給:アートポート
シネマスクエアとうきゅう、シアター・イメージフォーラムほか全国にて公開中
(C)2006 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved.

 香港黒社会に生きる男たちを描いたら右に出る者がいない鬼才ジョニー・トー監督が馴染みの俳優たちを迎え、新たな傑作を生み出した。金より名誉より、絆と友情を守り抜く男たちの生き様を描いた『エグザイル/絆』で主演の4人のうち、アンソニー・ウォン、フランシス・ンが来日、記者会見では終始爆笑のトークを繰り広げた。

まずはご挨拶をお願いいたします。

アンソニー・ウォン: (日本語で)こんにちは、元気ですか(笑)?
フランシス・ン: (日本語で)はい、こんばんは(笑)! 日本語はひと言しか話せません。
アンソニー・ウォン: おしゃべりだろ? 早く何か言えよ(笑)。
フランシス・ン: 早く記者会見終わらせて、日本料理が食べたい(笑)!

撮影中の思い出に残ったエピソードがあればお聞かせください。

アンソニー・ウォン: エピソードは二つある。楽しかったのは、フランシスが自動車を岩にぶつけてガソリンが漏れてしまい、エンジンをかけたまま、みんなが逃げ出したことだね(笑)。あともう一つは、真冬で屋外の撮影だったわけだが、寒さの中、フランシスが羊肉のしゃぶしゃぶと中国ソーセージ入りのご飯を作ってくれて、それがとても温かく美味しくて、みんな肥ってしまったことだな(笑)。
フランシス・ン: 楽しいエピソードというと、共演者のラム・シュが真赤なパンツをはいていることが分かってしまったことだね(笑)。占い師から「銃撃戦のような危ないシーンを撮るときには必ず赤いパンツをはきなさい。そうしたら安全に撮り終えることができます」と言われたそうなんだけど、結局彼は椅子から飛び降りるシーンの撮影で骨折してしまい、その日は赤いパンツをはいていなかったことが判明したんだ(笑)。
あと、面白かったのは、ロイ・チョンだ。俺たちは撮影中、彼にあだ名を付けたんだ。『カンフー・サッカー』の中の大家さんの奥さんの名前を(笑)。というのも、当時彼の髪は今の俺よりも長くて、しかもいつもロールを付けたままでいたからね。おまけに、くわえタバコで(笑)。すごい太ってしまった時期もあって、とにかくロイのその姿には笑わせてもらったよ。

それでは逆に、すごく辛かったエピソードがあればお聞かせください。

フランシス・ン: 何より、9ヵ月間という非常に長い撮影期間だったからね。その間俺たち4人は一切他の仕事が出来なかったから、俺たちも辛かったけど、香港映画界にとっても辛いときだったろう。というのも、この4人というのは香港の黒社会の映画を支える俳優たちだったからね(笑)。この4人が他に一切仕事が出来ないということは、その間、香港では一切黒社会の映画を作れなかったということだから、香港市民にとっては非常に辛い時期だったわけだ(笑)。
アンソニー・ウォン: 辛かったというのは、この映画は脚本どころかストーリーさえなかったし、どういう役なのかという説明も一切なかったんだ。だから毎日現場で、俺は他の3人から「今日は何やるんだ?」と聞かれて、適当になだめたよ(笑)。例えば、ポスターに移っている場所だが、二階建てくらいの高さがある丘から飛び降りるシーンの直前に撮った。そのときにみんなが考えたことは、「ここからどうやって飛び降りたらいいんだろう?」ということだった。それで俺は言ったよ、「イメージとしてはマルボロ・クラシックのCMでいこう」と(笑)。みんな、ちゃんとそれらしくやってくれた。あと、俺が適当に出した指示は「グッチのモデルみたいに歩け」ということだった(笑)。

9ヵ月間も拘束しながら脚本もロクに渡さないジョニー・トー監督とはどういう方なのですか?

フランシス・ン: 監督とは9ヵ月間、ほとんど交流といったものはなかったと言っていい(笑)。大体において撮影現場はそういう雰囲気なんだ。監督はあっち側で独りでバーベキューをして、俺たちは別の側でしゃぶしゃぶをやっていた(笑)。そして、撮影するときにはその中間の地点を使ってやり、それが終わるとそれぞれまた元の場所に戻っていくんだよ。大体こういう感じで9ヵ月間過ごしてきたね~(笑)。
アンソニー・ウォン: 監督とはほとんど交流がないが、俺たちのしゃぶしゃぶ部屋からは外の様子が聞こえるんだよね。「あ、監督は今、バーベキューをしてるな」とか「▲×■をしてるな」とか。外が騒がしくなってきたら、監督が撮影を始めたがっているなとか分かったんだ。

9ヵ月も撮影していたということは時間もたっぷりあったと思いますが、撮影以外のときにはどういうことをして過ごしていたのですか? 共演者の中で何か決まった役割みたいなものはありましたか?

フランシス・ン: 俺たちの中の役割というと、アンソニーにはとても美味しい精進料理の店に連れていってもらって、御馳走になったりしたよ。ロイはカラオケ係で、いつもカラオケの予約をしてくれた(笑)。ラムは明日仕事があるかどうか、監督から聞き出す役割で、仕事がないと分かったら、俺たち仲間内で「よし、じゃあ明日の予定を組もう」となったね(笑)。
アンソニー・ウォン: フランシスはカジノでブラブラ遊んでたよ(笑)。

ジョニー・トー監督はたくさんNGを出すことで知られていますが、今回は最高何回のNGが出ましたか?

フランシス・ン: 今回一番困ったのは編集者だったと思うね。というのは、今回はほとんどワン・テイクで終わったんだよ。アクション以外のシーンでNGが出たのは、誰かさんのせいだった。(……とアンソニーのほうを見る。記者爆笑)
アンソニー・ウォン: わざとNGを出して何回も撮らせたんだよ、修行のつもりで(笑)。そちらは年齢だけ先輩だからな。俺のほうが若手なんだよ(笑)。まあ、がんばってくださいな(笑)。

先ほど、ロイさんがカラオケ係とおっしゃいましたが、カラオケで得意なレパートリーは?

フランシス・ン: ロイは大変だったんだ。俺たちは毎晩違うカラオケ屋に行かなきゃならなかったからね。理由は、アンソニーがいつもものすごい古い歌ばっかり選ぶので、通信式じゃないところはディスクが引っ掛かっちゃって(笑)。それで、そのカラオケ屋は商売にならなくなるんだよ(笑)。だからその翌日は違うカラオケ屋に行かなくちゃならなかったんだ。アンソニー、頼むから新しい歌にしてくれ(笑)!
アンソニー・ウォン: 俺は毎回、ものすごく酔っ払ってカラオケ屋を出るハメになるんだ。というのは、まず1曲歌った後は他の連中が全部歌おうとするんで、俺は飲むしかないんだよ。
フランシス・ン: アンソニーは実はわざと酔っぱらうんだよ。後で清算しなくて済むから(笑)。
アンソニー・ウォン: フランシスはいつも俺よりずっと若いと言い張っているから、俺は気を利かしてわざと古い歌を選んでるんだが、もしも俺が知ってて彼が知らない歌があれば、“あぁ、俺より若いんだな”と分かるんだが、俺がどんなに古い歌を選んでも、彼は全部知ってるんだぜ(笑)。
フランシス・ン: 皆さん、プレスに書かれたプロフィールをご覧になっていると思うけど、この人、実は俺より1歳年下なんだよ。(会場からどよめき)
アンソニー・ウォン: ホントにそうなのか(笑)?
フランシス・ン: アンソニーは1962年生まれと載っているよね?
アンソニー・ウォン: それじゃ、間違いだ。俺は1964年生まれだから(笑)。

『エグザイル』は『ザ・ミッション 非情の掟』を思い起こさせるものがあり、どうしても引きずってしまう部分はあったと思いますが、『ザ・ミッション 非情の掟』のことは忘れて取り組もうとされたのでしょうか? 今回は、『ザ・ミッション』に比べて、隙がないほどカッコ良かったですが、どういう違いを出そうと意識されたのですか?

フランシス・ン: 実はこの映画については、監督から一言言われただけなんだ。それは、「『ザ・ミッション 非情の掟』の続編にしたい」ということだった。違いは歩き方だ。『ザ・ミッション 非情の掟』ではホストをモデルにした歩き方でやったけど、『エグザイル』では国際的なブランド、グッチやドルチェ&ガッパーナなどのモデルの歩き方を真似した(笑)。4人はそれぞれ、別々のブランド・モデルの歩き方をしてるんだよ(笑)。
アンソニー・ウォン: 大体、フランシスの言ったとおりだよ。「このシーン、どうする?」と聞かれたときには、(音楽を口ずさみ出し)マルボロのCMソングでイメージさせたこともあったな(笑)。

劇中、登場人物の若い頃の写真が出てきますが、実際に皆さんの若い頃の写真を使用しているのですか?

アンソニー・ウォン: もちろん、そうだよ! あんなハンサムな顔は俺に決まってるでしょ(笑)?
フランシス・ン: 彼の子供が可愛いことは望めないだろうね。若い頃があんな風なんだから(笑)。

お話を伺っていると、アンソニーさんが助監督のような役割を果たしていたように聞こえましたが、なぜ皆さんは監督ではなくアンソニーさんに演じ方を聞かれたのですか?

フランシス・ン: まず、監督に聞く勇気がなかったということがある(笑)。それに、アンソニーは主演男優賞をもらったこともある俳優だし、第一、彼は教えたがるんだよ(笑)。聞くと喜ぶからね(笑)。

他の共演者、サイモン・ヤムさん、ニック・チョンさん、ジョシー・ホーさんの印象やエピソードをお聞かせください。

アンソニー・ウォン: 実はラム・シュが助監督そのものなんだ。というのは、トー監督が本来やりたいのはラム・シュがやっている役で、でも俳優ではないので出来ないということで、ラム・シュに体現してもらっているわけだ。ロイはいつもたくさん疑問を抱えていて困惑しているみたいな様子でやっていた。ニックはとても努力家で、例えば彼が死んで布に包まれて火をつけられるシーンがあるけど、あの火は本物で、消せなかったところがあってね。本当に危ないところだったよ。あと、高い所から投げられるシーンもあったけど、着地する所に植木鉢が10~20個あって、彼は背中を痛めてしまったんだ。すごく頑張っていたね。
(フランシスのほうを向いて)お前も少し、仲間たちのことを話せよ(笑)。
フランシス・ン: 体で言うと、ロイはがっしりしているし、ラム・シュは太ってる(笑)! ニックは痩せてる!……サイモン? サイモンはカッコいいっすよ(笑)。

ほとんど脚本もない状態で撮影されたとおっしゃいましたが、出来上がった映画をご覧になって一番驚いたシーンや予想外の設定がありましたら、教えていただけますか。

アンソニー・ウォン: 出来上ってから観てビックリしたのではなく、撮っているときから毎日ビックリ仰天だったから(笑)。現場に入って何の撮影をやるのか知らされる毎日だったので、もう今更ビックリしないね(笑)。
フランシス・ン: 印象的だったのはラストのあたり、フォト・ブースでインスタント写真を撮った後のシーンですぐに俺たちが子供の頃の写真に切り替わるね。あそこは感動的だと思ったよ。

男気あふれる役でしたが、ご自身でしたらこういう男気あふれる行動がとれると思いますか?

アンソニー・ウォン: 冗談じゃないよ(笑)。
フランシス・ン: 実生活ではこんな状況になることはめったにないし、みんながみんな拳銃を持つわけじゃない。そういう状況になったときにどのようにふるまうかは、そのときになってみないと分からないよ。

それでは、これで終了とさせていただきます。

アンソニー・ウォン: 最後にちょっと話をさせてほしい。実は来日する前にトー監督と会って、またこの映画について話をしたんだ。本当は秘密にしなくてはいけないんだが、せっかくこの映画をご覧になって俺たちが男気あふれているとご覧になった方には申し訳ないんだけど、トー監督にとって俺たち4人は「主婦みたい」なんだそうだ(笑)。

ファクトリー・ティータイム

映画ではハードボイルドな男たちを演じていて、倒れそうなほどカッコいい二人……なのに、会見ではほとんど掛け合い漫才状態。酸いも甘いも噛み分けた香港おじ俳優たちはやっぱり、奥が深い。
(文・写真:Maori Matsuura)


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