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『おしえて!ドクター・ルース』
トークイベント

2019-08-15 更新

星野概念氏(精神科医など)トミヤマユキコ氏(ライター/東北芸術工科大学講師)

おしえて!ドクター・ルースdrruth 配給:ロングライド
8月30日(金)、新宿ピカデリーほか全国公開

 アメリカでいちばん有名な“お悩み相談”で、90歳の現役セックス・セラピスト、ドクター・ルースの波瀾万丈な人生を描いたドキュメンタリー映画『おしえて!ドクター・ルース』が、8月30日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開となる。

 80年代のニューヨーク。日曜深夜のラジオ番組に全米は夢中になった。誰も教えてくれない性のお悩みをズバリと解決するドクター・ルース。身長140センチ、ドイツ訛りの彼女は、そのチャーミングなキャラクターでたちまちお茶の間の人気者に。性の話はタブーだった時代に、エイズへの偏見をなくすべく立ち上がり、中絶問題で女性の権利向上を後押しし、LGBTQの人々に寄り添い、社会を切り拓いてきた。

 自分らしく生きるために学び、恋し、戦い、働く。アメリカで最も有名なセックス・セラピスト“ドクター・ルース”はいかに誕生したのか。ホロコーストの孤児、元スナイパー、シングルマザー、3度の結婚。時代に翻弄された90歳の半生をたどるドキュメンタリー。

 この度、本作の公開を記念し、星野概念氏(精神科医など)、トミヤマユキコ氏(ライター/東北芸術工科大学講師)が登壇したトークイベントが8月13日(火)に実施された。


 映画を観た感想について、まず星野概念氏が「とにかくすごい人。カウンセリングって、まずは患者さんから信頼してもらわないと、アドバイスできないから、はじめは繊細にコミュニケーションで距離をはかるけど、ルースさんは明朗快活にズバッと答える。放送禁止用語も言うけど、専門用語で真摯に学術的に答える、という普通できないことをやれるのがすごい。」と精神科医ならではの視点で、ルースさんのカウンセリングに着目してコメント。大学で、日本の少女漫画から読み解く、女性の労働について研究しているトミヤマユキコ氏は、「42歳で博士号をとり、ラジオも52歳でデビューし、人生の後半で思いもよらないことが起きてる。ある仕事人の人生として、こんな快進撃がおこるのがかっこい。人生、何が起きるのか分からないぞという気持ちにさせてくれる」とルースさんのキャリアに着目して、魅力を語った。


drruth

 ルースさんの対話力について、トミヤマ氏は「普通カウンセリングは対話を重ねることが必要だけど、話を聞いてその場ではっきりと答えるって難しい。ルースさんは、いくつかの相手への問いかけのなかで、答えを導いていくのがうまい。まるで居合斬りみたいな。」と分析。普段から患者さんの悩みに向き合っている星野氏は「悩みに対する見え方の解像度が高い。たくさんの人の相談にのってきているから、データベースもたくさんある。悩みに答えるのってすごく勇気がいるから、僕は何かを決めずに引き出す、というやり方をするけど、ルースさんはいくつか聞いて、なるほど、こうしなさいと自信を持って言える。質問を聞いただけで、彼女は違う景色や立体感が見えている」と語った。


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 本作の一番印象に残ったシーンや言葉について、星野氏は「ルースさんのお子さんやお孫さんたちが、彼女は過去の辛い経験を思い返さないように、防衛的な感じで働いているんじゃないか、と語っているところ。ある種、躁的防衛みたいな。ご自身は気づいていないけど、家族から見たら、彼女のそういう側面が見える。そういう部分があるんだなと思いました」と家族の視点からルースさんの人物像に着目したと言う。トミヤマ氏は、「すべての人はある意味ノーマルだから、ノーマルって言葉は好きじゃない、とか。そうした発言がマイノリティの人からは感謝されていたと思うんですよね。頑固に自分の信念を曲げないし、シンプルな力強い言葉で表現することで、人を繊細に救っていく。これはなかなかできないことだなぁと思いましたね」とルースさんの名言の数々に心を打たれたと話した。

 また、性を語ることについてトミヤマ氏は「日本は照れ隠しで笑いにもっていく。面白く喋ったり、聞いたりとかネタに昇華して、照れ笑いに逃げているのが現状。アメリカで『セックス・アンド・ザ・シティ』のキャリー・ブラッドショーの“セックス人類学者”という肩書きも、ルースさんが開墾をしてきた土壌だからある。ルースさんのにこやかに、真面目に性に取り組んできた、そうした影響があると思う」と日本とアメリカの社会の違いについて、独自の視点で分析した。

 最後に一言、星野氏は「すごくいい映画、というのを皆で共有してほしい。素晴らしい人なので、いろいろなことを考えたりするきっかけになれば」と語り、続けてトミヤマ氏は「面白いおばぁちゃんの話として終わらせず、様々な心に残る名言もあるので、言葉の映画だなとも見れる。いい言葉を拾って実人生に応用して欲しい」と締めくくり、和やかな雰囲気でイベントは終了した。


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星野概念氏 プロフィール

 精神科医。雑誌、Webでの連載のほか、寄稿も多数。音楽活動はさまざま。著書に、いとうせいこう氏との共著「ラブという薬」がある。


トミヤマユキコ氏 プロフィール

 東北芸術工科大学芸術学部講師。ライターとして日本の文学、マンガ、フードカルチャー等について書く一方、大学では少女マンガ研究を中心としたサブカルチャー関連講義を担当。著書に「40歳までにオシャレになりたい!」(扶桑社)、「大学1年生の歩き方」(清田隆之との共著、左右社)、「パンケーキ・ノート」(リトルモア)がある。



(オフィシャル素材提供)



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