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記者会見

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『サタンタンゴ』来日記者会見

2019-09-18 更新

タル・ベーラ監督

サタンタンゴsatantango 配給:ビターズ・エンド
大ヒット公開中!

 『ニーチェの馬』、『ヴェルクマイスター・ハーモニー』などのハンガリーを代表する巨匠タル・ベーラ監督。彼が足かけ4年の歳月をかけて完成させた伝説の傑作『サタンタンゴ』(94)が、大ヒット公開中!

 上映時間7時間18分、休憩を入れると約8時間と、ほぼ丸1日を費やすにも関わらず、公開翌日からの3連休、都内上映中のシアター・イメージフォーラムとヒューマントラストシネマ有楽町は6回中5回満席(あと1回もあと数人で満席)だったという。

 そして、『ニーチェの馬』(11)から約8年ぶりにタル・ベーラ監督が来日。9月14日(土)に行われた記者会見では、初公開から25年の歳月が経ち、4Kデジタル・レストア版で日本劇場初公開となる『サタンタンゴ』についてそして、監督業引退についても語った。


自分はアーティストではない、ワーカーなんだ

 タル・ベーラ監督は映画監督になりたかった訳ではない、と過去にもインタビューで語っている。哲学者になりたかったが、それを諦めた時どういう手段で人と「自分の見ているものを分かち合うか」を考えその手段にカメラがあったという。その思想から映画制作を始め、『サタンタンゴ』が制作されたのは25年前。世界各地で上映される本作は映画館、映画祭のみならず、パリ・ルーブル美術館や、ニューヨーク・MoMAでも上映され多くのファンを虜にしてる。「この映画は世界中で上映されている。とても奇妙なことに、どこの国でも肌の色や文化、宗教の違いなどに関係なく、同じように受け止めてくれている。私の作る作品の命題には、いつも人間に対しての本質的な問いかけがあるけれど、観た人はそれをしっかり理解してくれているんだと思う」と語るタル・ベーラ監督。また、自身について「自分はアーティストではない、ワーカー(労働者)なんだ。作品は自分のものではなく、分かち合うべきもの。25年という長い時間がたっても、このモノクロのクソみたいなものが受け止め続けられていることに感謝する」と続けた。


素晴らしいキャストに巡り会えば、作業はほぼ半分終わっている

 本作の物語の中盤で登場する、酒場での村人たちの、長回しを駆使したダンスシーンについて、振り付けや踊りの指導はあったのかについて質問があった。タル・ベーラ監督は「実際に飲んで撮影に挑んでもらった。出演者たちにメヌエットが踊れる技量があることは分かっていたし、その上でほぼ皆が酔っ払ている近い状態だった。撮影自体1テイクでOKだったし、その中で何が撮れたと思いますか? 彼らはファンタジーをもたらしてくれた。素晴らしいキャストに巡り会えば、作業はほぼ半分終わっているも同然なんです」と熱弁。さらに演出をすることは出演者の演技の幅を妨げるとも言う。「演出は彼らの存在感を限定してしまう。出演者が自由にしてくれてば、それがシーンや、ひいては作品自体に素晴らしいものをもたらせてくれるんです。演出するよりも100パーセントよかった。自由は力。花咲くことができる」と独自の解釈を述べた。


satantango

監督業引退は、言いたいことは言い尽くしたから

 フィルムでの撮影にこだわり続けてきたタル・ベーラ監督。なぜ、今4Kデジタル・レストアに挑んだのか、その理由について尋ねられると「デジタル化には寛容ではなかったが、やってみようかという気持ちになったんだ」と一言。ただ実作業が大変だった言い「作業量も多かったし、自ら1コマ1コマググレーディングしていく作業は相当な時間がかかった。ただそのお陰でフィルムに近いものが出来た」と自身で作業をこなしたことや、その成果についても自信を持っている様子だった。

 そして、タル・ベーラ監督の手で蘇った『サタンタンゴ』の劇場公開に合わせての来日。つめかけた記者たちは『ニーチェの馬』で監督業を引退すると宣言したその理由について問わずには入られなかった。「私は、22歳の時に最初の映画を撮って、それから40年近く映画を作ってきた。ゆっくりと一作ごとに新しい問いが生まれその度に、前に進続け、問いを掘り下げていき自分の映画的言語を探っていった。そして『倫敦から来た男』の時に“あと1本で引退しよう”と思ったんだ。言いたいことは言い尽くした。これ以上、繰り返して作品を作る理由は見つからなかった」と明かした。「繰り返し繰り返しだと飽きてしまうし、面白くない。評価されればいいホテルを誂えられることもあるけれど、そんなブルジョア的な映画作りを続けるなんてクソだね」と笑顔で語った。


satantango

 記者会見後にはシアター・イメージフォーラムにてティーチインも行われ、上映直後登壇したタル・ベーラ監督は「皆さんよく<サバイブ>(生き延び)ましたね、大きな感謝を」と、休憩を挟み約8時間を生き抜いた<サバイバー>たちを労った。ティーチインは時間の限り観客一人ひとりに丁寧に監督が応答し、人柄溢れる観客歓喜のイベントとなり、劇場を後にタクシーに乗り込もうとするタル・ベーラ監督の後ろ姿に、会場を出た観客の間から大きな拍手が巻き起こった。




(オフィシャル素材提供)



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