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『パラサイト 半地下の家族』
日本記者クラブ来日会見

2020-02-24 更新

ソン・ガンホ、ポン・ジュノ監督

パラサイト 半地下の家族parasite 配給:ビターズ・エンド
全国大ヒット上映中!
© 2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

 第92回アカデミー賞®で外国語の映画として初めての作品賞受賞をはじめ、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4冠に輝いた『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督と主演のソン・ガンホが、昨年12月に続き来日! 2月23日(日・祝)に東京・内幸町の日本記者クラブにて行われた記者会見に出席し、オスカー受賞の喜びや作品に込めた思いなどを語った。


 この会見の少し前に日本に到着したという2人だが、ポン監督は「今日は日曜日にもかかわらず、大勢に方に来ていただきありがとうございます」と挨拶。オスカー受賞について「喜ばしく光栄なことですが、決して最初から賞を目標に映画を作ったわけではありません。受賞以前に韓国をはじめ、イギリス、フランス、北米でも公開されていましたが、多くの観客の皆さんが熱く反応してくださり、それがなによりも嬉しいです」と観客への感謝を口にした。

 本作は日本でも1月1 日より公開され、観客動員数は2月22日時点で220万人を突破し、興行収入も30億円を超え、『私の頭の中の消しゴム』を超えて、15年ぶりに日本での韓国映画の興行収入1位の記録を塗り替えた。ソン・ガンホは「20年ほど前の2000年代初頭には、韓国映画が日本で数多く紹介されていました」とかつての“韓流映画”の興隆に触れ「いまは、そうした日韓の交流が少なくなってしまいましたが、この映画を契機に、韓国の素晴らしい作品、日本の優れた芸術家の作品が多くの人に受け入れられ、互いの文化に対し共感を抱くようになれば嬉しいです」と呼びかけた。

 改めて、この作品の何がここまで世界中の人々の心を揺り動かしたのか? ポン監督は「正直言って、私にも分かりません。いま目の前で起きていることがとても不思議です」と率直な胸の内を明かす。貧富の格差というテーマが多くの人々の心を打ったのでは?という指摘もあるが、ポン監督は「映画祭やプロモーションで多くの国を回って、貧富の格差という同時代的なテーマについての声もありましたが、私個人はそれは違うのではないかと思います。そうしたテーマは、見ている人に居心地の悪さを感じさせる部分もあると思うんです。それ以上に映画を観る皆さんに訴えかけたのは、予測不能な展開、予想を裏切る展開――特に後半の展開について、新鮮だったという声を多く耳にしました」とテーマ性以上に意外性のある物語が多くの人々に届いたのではないかとの見解を示した。

 先にも触れた「貧富の格差」というテーマについてはポン監督は「韓国や日本、世界中でいま、多くの人々が同じような状況に置かれ、同じ苦痛を抱き、“二極化”という言い方がされていますが、映画の意図はそれを暴きたかったということではなく、『未来に対する恐れ』というのがありました。私自身、息子がいますが、未来の社会は二極化を克服しうるのか? それはたやすいことではないと思います。私は決して悲観主義ではないですが、今後、どうすべきか? 私の持つ不安や恐れはこの時代を生きる全ての人が抱えているものだと思います」と語った。

 一方、ソン・ガンホは「この映画のタイトルは『パラサイト』(=寄生)ですが、内容を見ていただければ、私たちはこの社会をどう生きるべきか?どう生きればよりよい世界になるか?“寄生”ではなく、“共生”を描いた映画だと思います」と本作が伝えようとしているメッセージに言及した。

 本作は『マーティ』以来、64年ぶりにカンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールとアカデミー賞作品賞のW受賞という快挙を成し遂げたが、カンヌの受賞とオスカー受賞の喜びの違いについて問われると、ポン監督は、カンヌで審査員を務めたアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(審査委員長)、ヨルゴス・ランティモスといった監督に触れ「私が大好きな監督に私の映画を好きになってもらえたのが嬉しかったし、イニャリトゥ監督が『満場一致』を強調してくださったのが本当に嬉しかったです」と述懐。一方、オスカーに関しては数ヵ月間にわたる“オスカーキャンペーン”といわれるプロモーション活動を行なってきたが「このキャンペーンがすごく長かったので、この時間にシナリオを執筆すべきなんじゃないか? 私は何をやってるんだ?と思ったこともありましたが、いま振り返ると、このキャンペーンは複合的で巨大なキャンペーンの中で、映画をもう一度、検証していくプロセスでもあったと思います。この映画のどこが優れていて、どんな思いで作られ、みんなが参加したのか? ひとつひとつ検証されていく機会であり複雑な道のりを体験することができました」と述懐した。


parasite

 ちなみにソン・ガンホはカンヌの受賞時に「(本作の賞レースで)初めて賞をいただいたので、あまりの嬉しさに監督の胸元を何度も強くたたいてしまい、そのせいでヒビが入ったと聞いて『それはいけないな』と思いまして(苦笑)、オスカーではそういうことを避けて喜ばなければいけませんでした」と冗談交じりに語り、会場は笑いに包まれた。


parasite

 新型コロナウイルスの脅威が大きく取り上げられる中での来日会見となったが、ポン監督はソン・ガンホも出演している2006年の映画『グエムル-漢江の怪物-』で、ウイルスにり患した疑いの社会で、国家や人々がどうそれに向き合うかを描いている。いま東アジアで起こっていることをどう感じているかを問われると「現実と創作物が時代の中で侵入し合っていくのは自然な流れなのかなと思います」と語った上で「細菌やウイルスが体内に入るのではという恐怖より、人間の心理が作り出す不安や恐怖のほうが大きいのではないかと思います。そこに巻き込まれ過ぎれば、災害を克服するのが難しくなってしまうのではないでしょうか。実際『グエムル』でもそうしたことが描かれています。この事態をあまり恐れ過ぎこの状況を過度に受け取り、誇張して反応すると、もっと恐ろしいことが起こり得ます。ここに国家、人種間の偏見が加わってしまえば、より恐ろしいことになります。なので私は、この状況を世界が賢明に乗り越えていくのではないかと希望的に捉えています」と語った。

 また、「最初から賞を目標にしていたわけではなかった」という監督の言葉を受け、普段から映画を作る上で心がけていること、目標にしていることを問われるとポン監督は「告白するのが恥ずかしいのですが……(苦笑)、クラシックを作りたい、自分の作品がクラシックになってほしいという妄想を持って映画を作っています」と明かす。黒澤 明監督の『七人の侍』やヒッチコックの『めまい』、キム・ギヨン監督の『下女』といった名作を挙げつつ、「このような作品を作りたいと思っていますが、ほぼ妄想です(笑)。その上で、シナリオの執筆中や準備段階で、1対1で自分の書いているストーリーに向き合うこと、透明な状態で向き合うことを大事にしています。そこに興行的な成功や賞の獲得といった不純物を混ざらせることなく、準備を進め、映画を作っていくことを大切にしています」と真摯に語っていた。




(オフィシャル素材提供)



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