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舞台挨拶・イベント

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『ハイ・ライフ』上映会トークショー

2019-03-18 更新

クレール・ドゥニ監督×黒沢 清監督

ハイ・ライフhighlife 配給:トランスフォーマー
4月19日(金) 渋谷、ユナイテッド・シネマ豊洲ほか全国順次公開
© 2018 PANDORA FILM - ALCATRAZ FILMS

 3月12日(火)、アンスティチュ・フランセ東京で行われているフランス映画の現在を紹介する特集上映【第一回映画/批評月間~フランス映画の現在をめぐって~】のプログラム内にて、『パリ、18区、夜。』や『ガーゴイル』などで知られるフランス映画界の鬼才クレール・ドゥニ監督が来日し最新作『ハイ・ライフ』の特別上映会が開催された。実に14年ぶりの来日ということもあり、当日のチケットは5分で完売となった。

 イベントのゲストは、ドゥニ監督の大ファンを公言する映画監督の黒沢 清監督。上映後、満席の会場にクレール・ドゥニ監督、黒沢 清監督が登壇すると大きな拍手が巻き起こった。


 まず黒沢監督がトークの口火を切った。「この作品は一見ものすごくシンプルに見えますが、最初は男女の恋愛物語、もしくは精子や卵子の話だと思いきや、今度はブラックホールの内部に入っていく。このようなSFは、見たことがないです。クレール・ドゥニ監督とSFが出合うことで、このような美しい物語になったのですね」。続けて、『ハイ・ライフ』というタイトルの意味を質問すると、ドゥニ監督は「私は全くためらわずにこのタイトルを付けました。宇宙は高い所にある。そこで生活するから“ハイ・ライフ”です。私はアフリカのガーナで生まれたのですが、そこではJAZZのような音楽を“ハイ・ライフ”と呼んでいた。フランスで“ハイ・ライフ”といえば、ゴージャスな生活のことを指します。もちろん、私は皮肉の意味をタイトルに込めました。映画の中では罪人たちが死刑になるか、それとも実験体になるかという選択を迫られ、彼らは後者を選ぶのです。私でもそうしたでしょう」と答えた。「彼らの生活は完全に拘束されているわけではないが、絶えずジュリエット・ビノシュ演じる科学者ディブスに監視され、コントロールされている。それはどこか我々の生活に似ているような気がしました」という黒沢監督に、ドゥニ監督は「本作で描かれる宇宙船での暮らしを地球で例えるならば、潜水艦の中を想像して下さい。そして、ある女性受刑者が拘束されているのは人工授精を拒んだからなのです。反面、男性受刑者には自由があります。スティーヴン・ホーキングの説にあるように、太陽系から離れれば離れるほど、人間の一生はすぐに過ぎてしまう。だから彼らは宇宙で生命を作り出す必要があるのです」と返答。

 次に黒沢監督が「僕はモンテ(ロバート・パティンソン)の絶望の果てを見つめているような、独特の冷たい眼差しが好きです。これはあなたが過去に描いてきた『ネネットとボニ』や『ガーゴイル』の主人公たちに共通しているように感じました」と指摘すると、「確かにそうです。私が描く登場人物たちは少し絶望していると思います。モンテは自分の人生に絶望し、自殺を考えるのですが、自分の幼子を見捨てることが出来ない。彼は責任を感じます。それにより彼は地球では得ることが出来なかった愛の生活を手に入れるのです」と同意する。


highlife

 さらに黒沢監督が、「モンテが娘から“私はお母さんに似ているの?”と言われた時の彼の表情がとても印象的でした」と述べると、ドゥニ監督は「はい。モンテは娘に“母親には似ていない。まったく違う。おまえは特別だ”と愛情を示します」と答えた。また「主人公のモンテは、非常に禁欲的ですね。彼は欲望とは無関係のところで、図らずも子どもを授かります。僕の映画に登場するキャラクターたちもとても禁欲的だと言われているので、彼のような登場人物が出てくれて非常にうれしかったです」と黒沢監督が共感すると、ドゥニ監督は、「私が純潔を発明したわけではないですが、例えば修道士、騎士などは純潔からパワーを与えられていますね。女性はこの例には当てはまりません。それが正しいか、正しくないか私は判断をしませんが、本作のテーマの一つでもあります。純潔は人間の脆い部分をパワーとして内に留めるという役割があるのです」と答えた。

 最後にMCから二人に「愛の可能性について、お聞かせ下さい」と質問されると、黒沢監督は、「僕の新作『旅のおわり世界のはじまり』では、ある女性がたった独りでウズベキスタンに行くのですが、その孤独の中で、1つの感情のための生きて行こうとする。それは、恋人への愛です。僕はこの作品の中で“愛”を人が生きていくための唯一の心の支えとして描いています」と答え、ドゥニ監督は、「群衆の中でも、人は孤独になります。それは自分の中に愛がないときです。愛は自分自身がより人間的になるためのつながりだと思います。愛は人生を生きる意味です。実は『ハイ・ライフ』の撮影中に私は母を亡くしました。週末ごとに病院に面会に行って、だんだんと彼女が消えていくのを見ていました。彼女の生命と同時に、その愛が消えていくのを目の当たりにするような気がしました。年老いた女性がそうであるように、まるで少女のような状態でした」と結んだ。

 ドゥニ監督の『ハイ・ライフ』は4月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、ユナイテッド・シネマ豊洲ほかで全国順次公開される。


クレール・ドゥニ(監督・脚本) プロフィール

 フランスの監督、脚本家。1948年、パリに生まれる。
 1987年、『ショコラ』で初めて監督・脚本を手掛ける。1950年代の植民地時代、アフリカ独立の際の人種的緊張を描く半自伝的な同作は、カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されたほか、セザール賞にもノミネートされ、米国で広く批評家の称賛を受けた。
 1996年、ロカルノ国際映画祭にて『ネネットとボニ』(96)が金豹省を受賞。2017年にジュリエット・ビノシュ、グザヴィエ・ボーヴォワ、ニコラ・デュヴォシェル、アレックス・デスカス、ジェラール・ドパルデューが出演した『レット・ザ・サンシャイン・イン<未>』(17)がカンヌ国際映画祭監督週間のオープニング作品として上映され、日本でも第30回東京国際映画祭のワールド・フォーカス部門にて上映されている。



(オフィシャル素材提供)



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