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インタビュー

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『バハールの涙』オフィシャル・インタビュー

2019-01-17 更新

エヴァ・ウッソン監督


バハールの涙bahar
© 2018 - Maneki Films - Wild Bunch - Arches Films - Gapbusters - 20 Steps Productions - RTBF (Télévision belge)
配給:コムストック・グループ+ツイン

監督・脚本:エヴァ・ウッソン

 フランス出身。ソルボンヌ大学でイギリス文学の修士号(首席)とスペイン文学の文学士号を取得。
 その後、LAのアメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)で演出のMFA(美術学修士号)のプログラムへ進む。卒業制作「Hope to Die」は、学生アカデミー賞(Student Academy Awards)や全米撮影監督協会賞にノミネートされた他、カンヌ、トライベッカ映画祭など世界20以上の映画祭に出品された。
 13年に監督・撮影・製作の3役をこなした50分の中編「Those for Whom It's Always Complicated」はカリフォルニア州デスヴァレーで5日間、3人の役者を起用して撮影された。このコメディ作品は映画祭に出品後、14年にArteで放送された。
 翌年、長編第1作『青い欲動』(15)を撮り、ティーンエイジャーの性と青春を鮮やかに淫靡に映し出し、トロント国際映画祭、BFIロンドン映画祭、ロッテルダム映画祭をはじめ世界各国の映画祭で上映され、登場人物たちの心情に寄り添った描写が若い観客層を中心に支持を得た。



 捕虜となった息子を助け出すため、銃を取って立ち上がったクルド人女性と、片眼の戦場ジャーナリストの“真実”の物語『バハールの涙』。この度、エヴァ・ウッソン監督のオフィシャル・インタビューが到着した。

 女弁護士のバハールは愛する夫と息子に恵まれ幸せに暮らしていたが、ある日、クルド人自治区の故郷の町でIS(イスラミック・ステート)の襲撃を受け、男性は皆殺されてしまう。数ヵ月後、バハールは人質にとられた息子を取り戻すため、女性武装部隊“太陽の女たち”のリーダーとなり、最前線でISと戦う日々をおくっていた。同じく小さな娘と離れ、戦地で取材を続ける片眼の戦場記者マチルドの目を通し、再び我が子を抱きしめる日を夢見て、内戦を生き抜くバハールの姿が映し出されていく。


この映画を作ろうと思った理由は?

 私自身、フランコ政権と戦ったスペイン共和国兵士の孫娘として、“失われた理想”にとても興味がありました。スペインの内戦後、祖父も滞在していたフランスに亡命したスペイン人の収容所に関する、あるプロジェクトに06年から取り組んでいました。そこで生じたであろう集団的、また個人的なトラウマに興味を持っていました。クルド人の女性戦闘員たちの話を聞き、この題材について掘り下げた時、クルド人兵士の、自らの土地のための先の見えない戦いが私の家族の物語と共鳴したのです。この現代的な悲劇を通じて、私が以前から構想していたストーリーを表現する手段を見出したのです。過激派に捕らわれ、おぞましい状況から何とか逃げ出して、その後、拉致した者たちに戦いを挑む女性たちの物語から大きなエネルギーが発せられていて、私個人を超えて、広く語られなければならないと思いました。


映画の準備のためにクルド人自治区で、誰に会いましたか?

 自治区ではできるだけ多くのクルド人の派閥に会おうとしました。過激派には会おうと思いませんでした。彼らは私の主題ではありませんから。その代わり、逃げ出してきた女性たちの証言を得るため、前線と難民キャンプへ行きました。戦いに身を投じた女性たちにも会いました。ゴルシフテ・ファラハニが演じた主人公は、彼女たちの証言から作り上げられたのです。私が彼女たちと持つことができた非常に強い絆と共感が生んだ成果でもあります。14回もの人身売買を経験したある女性が、そうとは信じがたい優しさと強さを持って語る時、誰もが悲劇と苦痛についての自分自身の考えや信念について自問するはずです。戦争についての典型的なイメージが破壊されるんです。この経験を脚本に反映し、映画に密度を与え、一貫した世界観をもたせた上で、私自身の主観を入れ込みたいと思いました。


bahar

戦場ジャーナリストが脚本に加わりましたね。なぜですか?

 いくつかの理由があります。この女性ジャーナリストは、観客に代わって世界を見る目となります。女性戦闘部隊のリーダーが明かすいくつかの物事は、この状況では語るだけでは説明が不可能であり、ジャーナリストが主人公のスポークスマンになるのです。ジャーナリストの存在はまた、私に「戦争における女性」の意味を考えさせてくれました。女性の戦争リポーターとして、彼女は戦闘地における女性のアイデンティティという内的な視点と、外部の視点も持ち合わせています。象徴的な二人の女性戦争ジャーナリストから多くのインスピレーションを得ました。戦地で左目を負傷し黒い眼帯を巻いていたメリー・コルヴィンと、文豪アーネスト・ヘミングウェイの3番目の妻で従軍記者として1936年から活動したマーサ・ゲルホーンです。彼女はスペイン内戦について素晴らしい記録を残して、82歳まで現役でした。



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戦場ジャーナリストという職業についてなぜここまで掘り下げる必要があったのですか?

 戦場で自分の弱さを感じるのはなぜかということを理解することが重要だったんです。恐怖のフィクション的な表現を壊し、恐怖の根源に向かい、隠されたメカニズムを理解し、どこかで見た映画をリサイクルすることがないようにしたかった。「私たちはいつ恐怖を感じるか?」戦闘地域に行った時、私自身が恐怖を感じて学んだことがあるとすれば、合理的には理解できないということ。恐怖心が芽生える時、皆それぞれが自分なりの反応を示すということです。架空の人物にそれを投影はできません。恐怖がどのように作用するのかを理解するには、深く掘り下げ、人々の話を聞くしかないのです。ジャーナリストたちにとっては当たり前のことでも、私にはすぐには分からなかった。


どのように資料を集めたのですか?

 一つの世界を語るのには幾千もの方法があります。膨大な映像資料を集め、広範囲には目を向けず、いくつかの点にのみに集中しました。舞台装飾のダヴィッド・ベルザネッティのおかげでもあります。多くの情報を溜め込んだ後、ある時、主軸となる線を信じることにしました。すべてが本物そのままというわけではないけれど、全体としては適切であり一貫していると思います。クルド人元兵士の顧問は私たちに多くの必要不可欠なディティールを教えてくれました。夜、睡眠時には武器をどうしておくのか、どのように彼らの生存本能が働くか、それから力関係などです。



(オフィシャル素材提供)




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