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『シシリアン・ゴースト・ストーリー』
公開記念イベント

2018-12-07 更新

岡本太郎

シシリアン・ゴースト・ストーリーsicilian-movie 配給:ミモザフィルムズ
12/22(土) 新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー
© 2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM

 12月22日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次ロードショーとなる『シシリアン・ゴースト・ストーリー』の公開記念イベントに、字幕担当でパンフレットにも寄稿している、ライターで翻訳家の岡本太郎が登壇し、解説を交えながら映画について語った。


 1993年にイタリアで起こった“ジュゼッペ・ディ・マッテオ少年誘拐事件”というイタリア全土を揺るがせた実際に起きた事件をベースに映画が作られたということで、「日本ではあまりこの事件のことは知られていないと思います。イタリアは組織犯罪が盛んで、『ゴッドファーザー』などいろいろな映画にも登場しますがイタリアはマフィアで有名。もともとはイタリアの南部、この映画の舞台でもあるシチリアでマフィアは生まれ、徐々に勢力を拡大し、今はイタリア政財界にも結びついているという背景があります。マフィアを踏圧するために北のほうから様々な人が送られたのですが、みんな殺されていて。その殺しに加担したマフィアの一人がこの映画の主人公・ジュゼッペの父親のボスでした。ジュゼッペの父が警察に捕まり、仲間たちの情報をリークする代わりに刑を減軽してもらうという司法取引がされるんですが、そのマフィアの内情を暴露するジュゼッペの父を黙らせるために、息子であるジュゼッペが誘拐されたということなんです。これは監督に聞いたのですが、監督たち二人は事件の起きたシチリア出身ということで、この事件に非常に衝撃を受けて。しかし事件から20年以上が経ち、シチリアでもこの事件のことを知らない人が出てきて、この悲惨な事件のことを忘れて欲しくないという思いでこの映画を撮ったと話していました」と誘拐事件の起きた背景と、この映画が撮られるきっかけを明かした。

 なぜ街の人たちは誘拐事件についてだんまりを決め込み、見て見ぬふりをするのか?という質問には「日本人が抱くイタリア人のイメージとして、明るく陽気でおしゃべりというのがあるが、イタリアのなかでもシチリアの人に関しては、あまり積極的に話さない、何か訊かれても黙ってしまうという特徴があり、特にマフィア関係に関しては見て見ぬふりをするという文化があります。だから、映画の中でも街の人たちはみんな見て見ぬふりをしている」と説明した。

 映画については「初めて観たときは、事前にストーリーは知っていたのですが、すぐには受け止めきれないほど強い衝撃を受けて。その後、何回も観るほどにすごくいい映画だなと感じます。この映画は“反マフィア”の映画ではなく、“ジュゼッペに自由を与えたい”という気持ちが一番強く込められた映画だと思います。それから、ルナと仲良くなる男の子がセリフで、“この不法建築がなくなって自然が復活し、昔の美しい世界が蘇ったらいいのに”みたいなことを言っていて、豊かな自然のショットも多く映されているので、そういうメッセージも含まれた映画なのだと思います」と感想を語った。

 

 撮影監督のルカ・ビガッツィについては「いま、イタリアでナンバーワンの撮影監督です。イタリアはフェリーニや先日亡くなってしまったベルトルッチなど有名な監督も多く、ヴィットリオ・ストラーロなど優れた撮影監督もいるのですが、ルカ・ビガッツィは名実ともにその筆頭と言えるでしょう。ルカの映像の特徴としては透明感がある。そして、詩的で叙情的な映像がとてもうまい。だから水や森といった自然や、幻想的な雰囲気の漂うこの映画にはよく合っていた」とその映像美を絶賛した。

 本作が映画初出演となった主人公の二人については「ジュゼッペ役のガエターノは、とても整った美しい顔をしているのに声がちょっと擦れていて、とつとつとした話し方なのが逆に素朴な感じがしてよかった。ルナ役のユリアは、イタリア人から見ると明らかにイタリア顔ではないし、ルナという名前もイタリアの伝統的な名前ではないので、異邦人的な印象を抱かせる。ユリアはポーランド生まれで、しかし3歳の頃からシチリアで暮らしているので言葉はばっちりシチリア訛り。なので、この顔でなぜシチリア語を話しているのだろうと違和感を抱かせる」と、独自の視点から評価した。

 続いて、観客からの質問コーナーとなり、「所どころでフクロウが登場するが、フクロウは何かを象徴しているのか?」という質問には、「フクロウには死と生の世界をつなぐ使者という意味が込められていると思う。フクロウを通じてジュゼッペはルナにメッセージを伝えているのではないか」と答えた。また、本作の字幕を担当しているということで「ここの訳は上手くいったというお気に入りのシーンは?」という質問が挙がり、「10代の若い、ティーンエイジャーの言葉を訳すのが楽しかった。あと、訳しながら感極まってしまったのは手紙の部分。特に、ルナの手紙をジュゼッペが2度目に読むシーンの“いつも夢見てる”というところに感動しました」と字幕担当ならではの答えで、ぞくぞくと挙がる観客からの質問に答えていた。

 映画を観終わったばかりの観客は、岡本の解説に耳を傾け、より深くこの映画について想いを巡らせている様子で、大盛況のうちにイベントは幕を閉じた。



(オフィシャル素材提供)



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