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インタビュー

トップページ > インタビュー > 『欲望の翼 デジタルリマスター版』公開時インタビュー

『欲望の翼 デジタルリマスター版』
公開時インタビュー

2018-02-02 更新

ウォン・カーウァイ監督


欲望の翼yokubonotsubasa
© 1990 East Asia Films Distribution Limited and eSun.com Limited. All Rights Reserved.
配給:ハーク


 後に『花様年華』、『恋する惑星』、『ブエノスアイレス』などで知られるウォン・カーウァイ監督の第2作目にして各国の映画祭でセンセーションを巻き起こし、世界的な注目を浴びるきっかけとなった『欲望の翼』がデジタルリマスター版として、2018年2月3日(土)にBunkamuraル・シネマほか全国順次公開となる。公開当時のウォン・カーウァイ監督の貴重なインタビューを紹介しよう。


“1960年4月16日3時1分前、君は僕といた。この1分を忘れない――”名セリフ誕生秘話

yokubonotsubasa 「確かにこのセリフを書いたのは僕ですが、僕自身は、いまだかつてこんなセリフは妻にも言った覚えはありませんよ(笑)。こういうのは、人の気をひくための話し方です。これは私の考えですが、レスリーにはかなりナルシスティックなところがあり、他の人を好きになれない。一番好きなのは自分です。どこか自己中心的なところが彼にはあります。しかし彼はとても頭のいい人間であり、役柄の上でも養母のレベッカひとりに育てられ、女の扱い方を知っているという人間です。ですから、ここではそうしたレスリーの女のあしらい方のツボを心得ているという感じを出したかった。そこから、こういうセリフが生まれてきたわけです」。

 またこの映画の中で最もミステリアスな場面ともいえるラスト・シーン。突然、何の脈略もなく登場するひとりのギャンブラーとおぼしき男をトニー・レオンが演じている。記者会見で「このワン・シーンが唐突に挿入されているのでは」という指摘に対してウォンは「あれは、いろいろな場所にいろいろな時間があることを示したかったからなのです。同じ時刻に世界のどこかではベルリンの壁が壊れ、世界のどこかでは誰かが食事をしている。同じ時刻にいろいろな場所で、いろいろなことが起きているという感じを出したかったんです。あの場面のすぐ前の、香港の坂道で鳴る公衆電話のカットや、フィリピンに到着したカリーナのカット、サッカー場の受付にいるマギーのカットは、すべて同じ時間に起こっていることなんです。ラストのトニー・レオンのワン・シーンも、その同じ時刻に世界のどこかで起こっていることのひとつとして描いたのです」と説明した。

yokubonotsubasa 「時間が異なれば、状況も異なります。私たちは今ここにいて話をしていますが、数年後はみんな別の場所にいて、ここには居ないでしょう。中国には、時間について、こんな諺があります。“桃の花は毎年いつも同じだが、花を見る人は毎年違う”。誰かが今年この花を見る、5年後にはこの人はいなくて別の人がやってくる。もしかしたら誰もこないかもしれない。例えば、どこかで話をしたり、食事をしたりする。それが心の片隅に残っていて、ある日、突然思い出す。つまり“一瞬”が大切なのです。生きているうちで、その1分間は唯一無二の1分間なんです。過ぎてしまえば、二度と戻ってこない。そして記憶の中の出来事は、たとえ1分間でもとてもとても長い。好きな出来事は大切にとっておくことが出来るし、嫌いな出来事は消し去ることができる。それが個人にとっての“時間”なのです。私は“人間が生きていくことの最大の報酬は思い出を持てるということだ”と思っています」。

 “時間”対する強いこだわりと想いを作品に込める監督ウォン・カーウァイ独特のスタイルの原点を知ることのできるインタビューとなっている。「あの時にしか生まれ得なかった」奇跡の傑作が、制作から28年の時を経て新たな疾走を始める。



(オフィシャル素材提供)


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