インタビュー・記者会見等、映画の“いま”をリポート!

Cinema Factory

Cinema Flash




広告募集中

このサイトをご覧になるには、Windows Media Playerが必要です。
Windows Madia Player ダウンロード
Windows Media Playerをダウンロードする

舞台挨拶・イベント

トップページ > 舞台挨拶・イベント > 『ポンチョに夜明けの風はらませて』“師弟”トークイベント

『ポンチョに夜明けの風はらませて』
“師弟”トークイベント

2017-08-13 更新

廣原 暁監督×黒沢 清監督

ポンチョに夜明けの風はらませてponcho

配給・宣伝:ショウゲート
10月28日(土) 新宿武蔵野館他にて全国ロードショー
© 「ポンチョに夜明けの風はらませて」製作委員会

 早見和真の同名小説を新鋭・廣原 暁監督が映画化した青春ロードムービー『ポンチョに夜明けの風はらませて』が、10/28(土)より公開となる。公開に先駆けて、シネマカリテで開催中の「カリコレ2017」にて本作の特別上映&廣原 暁監督×黒沢 清監督によるトークイベントが実施された。

 大学在学中に制作した『世界グッドモーニング!!』で、ぴあフィルムフェスティバル審査員特別賞、第29回バンクーバー国際映画祭ドラゴン&タイガー・ヤングシネマ・アワード グランプリを受賞し、世界が注目する若手監督、廣原 暁。東京藝術大学院の入試時に提出された同作を観て廣原監督の合格を決めた、最新作『散歩する侵略者』が早くも世界中で話題の日本を代表する黒沢 清監督。廣原監督『ポンチョに夜明けの風はらませて』の公開を記念して、恩師と教え子によるトークイベントが実現! 「『世界グッドモーニング!!』を観た瞬間、“これはすごい人が現れた!”と、文句なく入学してもらいました」と、廣原監督の才能に太鼓判を押す黒沢監督。教え子の最新作について、「ただの青春映画じゃない。キャストに誰1人高校生がいない。だからこそ痛ましい、悲壮な、ただならぬ緊張感がある。2度3度観ていただければ!」と絶賛した。


黒沢 清: 今日は廣原監督が東京藝大院の時に、僕が先生として付き合っていた縁で来ました。今、2回目の『ポンチョに夜明けの風はらませて』を観ましたが、違う印象。観るたびに違う印象の映画なので、そこを聞いていきたいと思います。
 1回目はバカなことを最後までやり通す典型的な青春映画だと思ったけれど、今日は「青春映画でもないな」と思いました。物語は「青春映画風」なんですが、最初からこの人たちに帰る場所はない。彼らは社会からドロップアウトして行く人たち。そういう一種の溌剌とした青春というより、ニヒリスティックな不吉な気配のする映画だな、と。そう思う最大の理由はキャスティング。誰1人高校生いないもん。みんな高校生を越えた人たちだから、不吉な予感がする。全員が学生を卒業していて、背負ってるものが社会そのもの。3人プラス1人のいい歳した大人が高校生の気分に戻って、社会を背にしてどこかに突っ走って行く。痛ましい、悲壮な、だからこそただならぬ緊張感がある。この年齢の俳優をキャスティングした理由は?

廣原 暁: 最初からリアルな高校生は想定していなかったんです。リアルだと自然な映画になってしまうというか、初めから自然さには興味がなく、最後のエキストラも含めて、リアルな高校生を出さない形で進めました。

黒沢 清: 高校を舞台にした作品はたくさんある中で、真っ向から違えた狙いは?

廣原 暁: すごいフィクションがやりたかったというのもありました。体が動かせる人、演出的に大きく芝居をしてもらったり……リアルな高校生ってこうだよな、というのとは違うベクトルでやりたかったんです。

黒沢 清: 前半はバカバカしいことを、やりたい放題にただやっていく。中盤の海に辿り着いてから、やってることは変わらないのに、社会からドロップアウトする方向にガラリと変わる。前半と後半のタッチの違いはどの段階で考えたんですか?

廣原 暁: 特別なことを考えたわけではないのですが、撮影準備している段階で、海の夜のシーンが「明日世界が終わるかもしれない」みたいなシーンにしたくなったんです。言葉にすると恥ずかしいんですが(笑)。

黒沢 清: 考え過ぎだと思うんですが、三角の東映マークから始まって、竹内 力さん(プロデューサー)の名前も出てくる。趣味的なことを言うと、東映には70年代前半に山城新伍が平気で高校生で出てくるめちゃくちゃな青春モノ、青春モノという名を借りて大人がめちゃくちゃやってやろうという『不良番長』シリーズなどがあったんですが、意識しました?

廣原 暁: 最初は『トラック野郎』とか意識していました。鈴木則文監督のぶっ飛んだ印象、いうか……。

黒沢 清: くだらない下ネタとかね(笑)。こういう作品を廣原の最新作で、こういうキャスティングで、急に70年代の東映が出てくるのはやや驚きでした。海を挟んだ後半。もう取り返しがつかない感じが出てくると相米慎二監督を感じるのですが、意識した?(※実際に本作の製作に入っているのは「東映ビデオ」)

廣原 暁: 狙ってはいなかったのですが、撮影の時に薄々そうなる気はしていました。『台風クラブ』の話に向かっていったというか。

黒沢 清: 相米監督はティーンネイジャーを使ってめちゃくちゃやってたんですが、前半の東映タッチから相米タッチになる。

廣原 暁: いろいろな映画を参考にしました。例えば、群像劇でロバート・アルトマンが好きで、なるべく人がたくさん……。

黒沢 清: そんなに多くないけどね(笑)。俳優については?

廣原 暁: 太賀くんのお芝居はすごく明確。セリフも聞き取りやすくて気持ちいい。僕の勝手なイメージで、太賀くんって時代からずれてるものを持ってるような気がして、そんな良さを出せたらいいなってキャスティングしました。確か太賀くんに『トラック野郎』を見てくれと言ったような気がします。

黒沢 清: ムチャクチャな指示ですね(笑)。確信犯で『トラック野郎』なんですね。女性も強烈なお二人が出てくる。男たち以上にムチャクチャした挙句、ちゃっかりした役ですが、この2人は?

廣原 暁: 本当は、女性陣が一番不安でした。男性陣はいろいろ説明できるし見せ場もあるけど、女性は「なんでここで喧嘩になるんですか」って聞かれても説明できるか不安だったんです。でも、二人とも前向きに捉えてくれました。

黒沢 清: 「理由は分からないけど、めちゃくちゃやればいいですね?」と。
 他に『トラック野郎』だったのかと思うのは、人間以上に車が強烈なキャラクター。車のフロントガラスを叩き割るのはたやすくなくて、そうなった車は絶対に一般の道を走れない。スタートしたばかりで叩き割るのは、撮影の事情から言っても相当大胆なこと。よくやりましたね。

廣原 暁: あまり法律を考えてなかったというのがあるんですが(笑)。法律には確か、フロントガラスが割れた車で走っちゃいけないとはないと思いますけど……。

黒沢 清: 絶対だめでしょ! 本来フロントガラスがあるべき車は、割れていると走れないですよ!

廣原 暁: 公道は走ってません。

黒沢 清: 制作部が止めたんでしょう(笑)。実際に割るのは大変だったのでは?

廣原 暁: 簡単に割れないんですよね。ヒビは入るけど、気持ちよくパーンと行かない。そのおかげで何回も殴れましたが。最後はスタッフが鉄パイプで叩きまくってました。

MC: 最後に映画の見どころをお願いします。

黒沢 清: 最初に申し上げましたが、単なる青春映画のようでいて、いろいろに見える不思議な作品。一人ひとり感想が違うと思います。どんな映画なのか、言葉で伝えるのは難しいですが、2度3度観て、いろいろと話し合っていただけると。観れば観るほど味わいが出てくる深い作品です。

廣原 暁: 俳優が魅力的に写っていると思ってます。いろいろな方に紹介していただけたら嬉しいです。



(オフィシャル素材提供)



関連記事

Page Top