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『沈黙-サイレンス-』長崎記者会見

2016-11-02 更新

塚本晋也

沈黙-サイレンス-chinmoku

配給:KADOKAWA
2017年1月21日(土) 全国ロードショー
© 写真:繫延あづさ

 戦後日本文学の最高峰とも称される遠藤周作の「沈黙」(新潮文庫刊)を、『タクシードライバー』、『ディパーテッド』のアカデミー賞®監督、マーティン・スコセッシが完全映画化した『沈黙-サイレンス-』(原題:Silence)が、2017年1月21日(土)より全国公開となる。

 アカデミー賞®最有力と注目される本作は、スコセッシが1988年に原作と出会ってから28年、読んだ瞬間に映画化を希望し、長年に渡り暖め続けてきたという待望のプロジェクト。

 17世紀江戸初期、激しいキリシタン弾圧の中で棄教したとされる師の真実を確かめるため、日本にたどり着いた宣教師の目に映った想像を絶する日本を舞台に、人間にとって本当に大切なものとは何かを、壮大な映像で描いた歴史大作だ。キャストはアンドリュー・ガーフィールド(『アメイジング・スパイダーマン』)、リーアム・ニーソン(『シンドラーのリスト』)、アダム・ドライバー(『スター・ウォーズ フォースの覚醒』)に加え、日本からは窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬 亮、笈田ヨシら実力派が集結。遠藤周作没後20年、原作「沈黙」の刊行50年の節目の年にハリウッドと日本が融合した、今年度の賞レースにおける最注目作品となっている。

 この度、長崎の外海地区がモデルとなったトモギ村の敬虔なカトリック信徒であるモキチを演じた塚本晋也が来崎、日本二十六聖人記念館にて記者会見を開いた。自ら主演を務めた監督作『野火』(2015)は、ミニシアターの公開ながら社会現象化し大ヒット。また、大ヒット作『シン・ゴジラ』や福山雅治主演の『SCOOP!』など、俳優としても個性的な演技を披露している。オーディションでモキチ役を射止めた塚本は、出演が決まった2009年に訪れて以来、二度目の長崎訪問となった。

 黒い装いで登場した塚本は、テレビ、新聞、雑誌な長崎メディアが多数集った会見場で「(マスコミの数が)すごいですね」と驚いた様子。「2009年に役が決まった時、少しでも『沈黙』の世界に近づきたい、舞台となるトモギ村を見てイメージを固めたいと思い、外海や遠藤周作文学館を周りました。今回、映画が完成間近となった二度目の長崎では、遠藤周作さんが足を運ばれた場所を訪れて、更に見識を深める旅をしたい」と挨拶した。

 質疑応答では、「現在生きている監督で、最も尊敬しているスコセッシ監督が日本の原作を映画化するということは“事件”。皆さんも一緒にその“事件”を体感していただきたい」とコメント。『タクシードライバー』を見て以来のファンなので、テレビドラマで英語を話す役を演じていたことでオーディション参加を打診され、即答で「もちろん」と答えたのが始まりとなった。遠藤周作の原作は、「高校時代に『野火』も含め日本文学を読みまくったのですが、あろうことか『沈黙』は読んでいませんでした。すぐに書店に行き読んだ。様々な側面のある非常に興味深い小説で、今まで気づかなかったのがかなり恥ずかしいと思った」と述べた。

chinmoku 敬愛するスコセッシとのオーディションでは、「監督と台詞の掛け合いをする機会がありました。監督はもの凄く演技が上手で、自分も名優になったように感じた。それはまるでジャズのセッションのようで、この経験があれば受かっていなくてもいいと思えたくらいだった」と振り返る。巨匠との現場では、「あまり演技指導はしないんです。その代わり、何度も何度も撮る。5~6回なんてレベルではなく、カットによっては100回くらい。それがもうビックリでしたね。ただ、役者をすごく信用していて、全て委ねるんです。極端に言うと『好きにしていいよ』と。役者が出したものを最終的に監督が汲み取って、映画の血肉にしていく」と、演出術に驚いた。自分にとってこの作品はと問われ、激しい弾圧を受けるモキチの「殉教シーンの撮影で、万が一、死んでしまってもまあいいか、と思えるほどの映画。それほどの想いで取り組んだ。答えるのは難しいですが、一言で言うと最高の映画です」と熱く語った。

 演じたモキチの役作りについて、「自分のキャラに近いのはキチジローですが、敬虔な信徒であるモキチを演じるに際しては、自分が信じるスコセッシをスコセッシ教として崇める気持ちと、戦争がまた起こってしまうかもしれない現在に、未来の子供たちに祈りを捧げる気持ち。この2つを心に持って挑んだ」とのこと。更に「モキチ役では50kg切るまで痩せなくてはならなく、栄養士がついていたものの、かなりギリギリまで痩せて辛かったです。立ち上がるのも、何かをつかまなくてはならない感じだった」と、精神面だけではなく、肉体面でも過酷な役作りだったという。

chinmoku そして、遠藤周作が見つめた長崎について、「一度目は、ただ『沈黙』に近づきたい、という想いで来ました。今回は、『女の一生』などの小説も読んで来ましたので、より深い理解がある。思想を奪われる、爆弾を落とされるという二度の暴力を受けた長崎という土地を愛した遠藤周作さんは見事に描いている」と、日本を代表する文学者に対する敬意を語った。

 2018年の世界文化遺産登録に推薦されている“長崎の教会群とキリスト教関連遺産”対する質問には、「まさに隠れキリシタンが生きた場所。遠藤周作さんの小説では、隠れキリシタンのことを“弱者”、殉教した方を“強者”、棄教してしまうもうひとつの“弱者”を描いています。考えさせられるのは、何が強くて、何が弱いのか、読んでいてそれが分からなくなるんです。殉教とは、自分がとやかく言えることではなく、その当時、その時を生きた方々の尊厳があったのだと思います。では隠れの方が弱いのかというと、僕には弱いと思えない。信念を曲げずに、隠れてでも信仰を守ろうとした方々で、自分の考え方に近い。そんな方々が生きた場所は、とても綺麗で美しい場所。だからこそ、世界遺産に指名されたことは素晴らしいこと」と締めくくった。


【日本二十六聖人記念館】

 日本で初めての殉教者が出た長崎・西坂にある記念館。西坂は豊臣秀吉によるキリシタン禁止令により、1597年2月5日京阪地方へ伝導していたフランシスコ会宣教師6人と日本人信徒20人が処刑された丘で、キリストが十字架に架けられたゴルタゴの丘に似ていることからこの地が処刑の場に選ばれたといわれている。戦後、原爆の破壊から立ち上がった長崎は殉教地であった小高い丘を公園にかえ、昭和31年、長崎県はこの丘を史跡に指定。26人の殉教者が列聖して100年目の昭和37年に二十六聖人等身大のブロンズ像嵌込(はめこみ)記念碑と記念館が建てられた西坂公園が完成。また、昭和25年(1950)には、ローマ教皇・ピオ十二世がこの地をカトリック教徒の公式巡礼地と定めた。


(オフィシャル素材提供)




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