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『秋の理由』公開記念トークイベント

2016-09-17 更新

伊藤洋三郎、佐野和宏、寺島しのぶ、福間健二監督

秋の理由akinoriyuu

配給:渋谷プロダクション
10月29日(土)より新宿K's cinemaにてロードショーほか全国順次公開
© 「秋の理由」製作委員会

 詩人や映画評論家としても活躍する福間健二監督の最新作『秋の理由』の10月29日の公開を記念し、出演の伊藤洋三郎(「あぶない刑事」シリーズ、石井 隆監督作品、『百円の恋』『恋』)、佐野和宏(『バット・オンリー・ラヴ』監督・主演)、趣里(NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」、山戸結希監督作『おとぎ話みたい』、池田千尋監督作『東京の日』)、寺島しのぶ(『ヴァイブレータ』『キャタピラー』)と福間健二監督が登壇し、公開記念トークイベントを開催した。

akinoriyuu 映画の新しい語り方と誘惑を、主に女性たちの生きる「いま」のなかに探ってきた福間健二監督が、長編第5作目となる本作では、60代を迎えた二人の男の友情を軸に、この世の迷路の先でなお生きることに「肯定」の炎をともそうとしている。

 本映画は、咽頭癌を患って声帯を失っている佐野ありきの映画である。『64-ロクヨン-』の瀬々敬久監督らとともに“ピンク四天王”と称された、俳優・監督の佐野は最初、「世界観が違うから、異物が入ってしまうと思った」が、監督は「村岡役の職業を作家と決めた瞬間に佐野和宏でやりたいと思っていたので、僕の世界があるとしたら、それを佐野和宏に思い切り壊してほしいというつもりでした。断られても、絶対に出てもらうという気でいました」と語った。寺島は、「監督のお人柄と、これにかかわらないといけないんじゃないかなという自分の勘があって、60代の友情の話という大人のストーリーが日本の映画界で少ないので、こういう大人の映画に参加させていただきたいなと思いました」と話した。

 司会者から「寺島さんは年配の方と関わって映画作りがしたいと聞いたのですが、その理由とは?」と聞かれ、「やっぱり順番から言ったら、私より先に亡くなっちゃう……(会場爆笑)人たちのお話っていうのはすごく貴重だなって思うし、そういう方からオファーがきたら断らないというのを最近自分の中で決めている。お芝居だけでなく、撮影中のちょっとしたお話が自分にとって得るものがある。だから福間監督と関わりたいと直感的に思ってしまいました」と話した。

akinoriyuu 伊藤は、スランプに陥った親友の村岡の才能を信じ、彼の新作を出すことを願っている本の編集者役で、同時に、実は村岡の妻の美咲を好き、という役どころだったが、「自分の親友の奥さんを好きになるという感情は誰にでもあると思うので、それは人として分かる。ただそれを言ってしまうというのは……60になると、たがが外れるので、『愛してる』とまでは言わなくても『好き』というのは言えちゃうというのは分かる」と話した。寺島は、伊藤演じる宮本に関して、「身近にいて、旦那さんを支えてくれる人であり、自分のどうにもコミュニケーションが取れないという状態を身近で一番見てくれている人であり、もしかしたらそういう風に心に隙間ができた時に、『この人がいなかったら、もしかしたらもっとすごいことになっていたかもしれない』という潤滑油のような、彼がいたから私が支えられて、彼も支えらえてて、みたいな人間関係の微妙なひだみたいなものがすごく心地良かったです」と話した。

akinoriyuu 佐野自身は、咽頭癌を患って声帯を失っている。佐野が演じる村岡は、代表作『秋の理由』以降、小説を発表していなく、精神的な不調から声がでなくなり、筆談器を使っているという役どころである。村岡役に共感できた点を聞かれ、佐野は「書けない作家、世捨て人というところが共感できた。実際は破滅的になれないけれど、映画の中ではそれを発散できた」と答えた。

 夫が3年も声が出なく、『自由になりたい』と言う妻役の寺島は、「『結構きつい言葉を投げるけれど、こういうセリフ言いますかね?』と監督に聞いたら、『うちの奥さんはこういう感じ』と言われたので、心置きなくやらせていただきました」と話し、笑いを誘った。

 夫婦喧嘩のシーンに関しては、佐野演じる村岡の書斎として、亡くなった詩人の新井豊美さんが実際に使っていた書斎で撮ったそうで、寺島は、「大事な書物が一杯あるので、『なんでもやっていいけれど、ここからここの書物は投げちゃだめ』と言われた」という現場のエピソードを話した。佐野も、寺島との共演について、「真剣勝負で向き合った。僕は芝居ができない人なので、本番は1回しかやりたくない。」と話し、一発勝負の長回しが多い本作だからこその化学反応が生まれた理由を説明した。

 伊藤は、「僕の演じる宮本の働いている出版社のロケ地は、実際に監督の詩集を出している会社なんですけれど、裏のほうに監督の詩集が山のように積んであって、『僕の本、まだこんなに残っている』という監督のせつない表情を見た」というエピソードを話した。

akinoriyuu 寺島は、「撮影の初めのほうで、伊藤さんと佐野さんと三人で歩くシーンから撮った。私を真ん中にして『自由に歩いて下さい』と言われた。役が埋まっていないと歩く芝居って本当に難しくて、だんだん埋まってくるとその人の歩き方になったりだとか、こういうちょっと前屈みの人なんじゃないかだとかだんだん分かってくるんですけれど、歩くシーンって悩むんですよね。でも三人でだだっ広いところを歩いた時に、自然に美咲像が決まってきて、『これからこうやればいいいんだ』っていうヒントになりました。歩くのを初めのほうにやるのは好きではないんですけれど、『この三人の関係ってこうことなのかもしれない』というのが、打ち合わせなくそれぞれ歩いたときに出来上がったので、記憶に残っているシーンです」と話した。

akinoriyuu 最後に監督が、「佐野和宏が演じた村岡を声が出ないとした。映画は、サイレント時代は声がなく、そこからの色々な表現があって、今の映画があるんだけれど、『映画はこういう風にして声になるんだ』ということを改めて確認できる映画になった。エッセンス的に『ここは映画だ』というのが掴めたので、まずはそこを楽しんでほしい。『人って一人で生きてない。でも一人で生きている自分もいる』ということ、それぞれ生きていくことを見つめるきっかけにしてもらえたらいいかなと思います」と観客へのメッセージを伝えた。



(オフィシャル素材提供)



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