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インタビュー

トップページ > インタビュー > 『ディストラクション・ベイビーズ』オフィシャル・インタビュー

『ディストラクション・ベイビーズ』
オフィシャル・インタビュー

2016-05-09 更新

真利子哲也監督


ディストラクション・ベイビーズdistraction-babies
© 2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会

真利子哲也監督

 1981年、東京都生まれ。
 法政大学在学中に8mmフィルムで自主制作した短篇『極東のマンション』『マリコ三十騎』が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で2年連続のグランプリ受賞、世界で最も歴史あるオーバーハウゼン国際短編映画祭で映画祭賞を受賞など、国内外で注目を浴びる。
 東京芸術大学大学院の修了作品『イエローキッド』は、バンクーバー国際映画祭をはじめ各国の映画祭で高い評価を受け、学生映画として異例の劇場公開。毎日映画コンクールで新人賞、高崎映画祭、日本映画プロフェッショナル大賞にて監督賞など受賞多数。
 続く『NINIFUNI』は、42分の中編ながらロカルノ国際映画祭で特別作品として選出され各地から反響を呼び、劇場公開となる。またオムニバス映画の1編『FUN FAIR』ではマレーシアにて撮影を敢行。沖縄国際映画祭にて発表後、国内で劇場公開され、話題を集める。
 その後ドラマやMVなど活動を広げながら、意欲的に作品を発表。本作『ディストラクション・ベイビーズ』は、満を持してのメジャーデビュー作となる。



 国内外から圧倒的注目を浴びる新鋭 真利子哲也監督の、満を持しての商業映画デビュー作にして衝撃作『ディストラクション・ベイビーズ』。脚本は真利子哲也と共に、『桐島、部活やめるってよ』で日本アカデミー賞優秀賞を受賞し、若い世代の感情の揺らぎを掬いとる名手 喜安浩平が担当。そして、世界が注目する新鋭監督のもとに、柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎と日本映画界を担い、革命をもたらす若き才能が集結! さらには、池松壮亮、でんでんら、主役級の存在感を誇るエッジの利いた演技派の競演も決定。若者の狂気と欲望を圧倒的な強度と密度で描き、昨今の日本映画の枠には収まりきらないパワーを持つ本作。この度、監督を務めた真利子哲也のオフィシャルインタビューが届いた。


本作の着想はどこから?

 2012年4月にミュージックビデオの依頼を受けて、愛媛県松山市にはじめて足を運びました。取材を終えて、同行していたプロデューサーと呑み歩いている時に、とあるバーのマスターをしていた男と話していてその生き様に感銘を受けちゃって。彼は同世代なんですが、十代から路上での喧嘩を生業のように生きてきて、はじめは冗談かと思いましたが、その話を裏付けるように拳が嘘をついていなかった。ミュージック・ビデオを撮り終えてから、すぐ松山に住み込んで喧嘩について聞き込みを始めました。彼への取材と並行して脚本を書き進めながら、シネマルナティックという映画館に足繁く運ぶうちに知り合いも増えて、松山にどんどん魅了されていって。ある程度、焦点が絞れたところで東京に戻ると、劇場公開していた『桐島、部活やめるってよ』(12年/監督:吉田大八)で脚本の喜安浩平さんが松山出身だと知って、関係者を辿って声をかけました。
distraction-babies その後も断続的に松山に足を運んで、『あすなろ参上!』や『三津浜と七人の神々』といった松山を舞台にした映像作品を制作しながら、映画の手がかりを探しました。街中の路地や兄弟の住んでいる造船所など、こうした活動を通して知りました。取材をしながら想像を巡らせたストリート・ファイトや人間関係、同時に見ていた松山の穏やかな風景、血気盛んな祭りの喧騒など、様々な事柄を目の当たりにしながら他所者ゆえの自分が得た違和感を大事にして脚本を書きました。


主人公・泰良について。

 繰り返し喧嘩するイメージがはじめからありました。きっかけは喧嘩の取材にありましたが、事実そのままを脚本として書くつもりはありませんでした。ただ主人公の泰良に台詞で何を言わせても、どうにも違和感が生まれる。はたして、この男は一体何なのかということで脚本と向き合っていたように思います。
distraction-babies 脚本を書き始めた時から、柳楽優弥くんの名前をあげていました。彼の目に明らかに野心があって俳優としての威厳もあった。その頃はお会いしてなかったので、若さゆえの危うさもあるだろうということも含めて、柳楽優弥以外に考えられませんでした。限られた時間の中でお互い「泰良とは何か」と言葉を尽くしたものの、理解したからといって体現できるものではなく、演じる本人は相当なプレッシャーだったと思います。松山の路上ではじめの喧嘩を撮った時に、「こういうことだね」と通じ合えたことは大きかった。結局のところ、僕はこの映画を通して「泰良とは何か?」を探していたように思います。


他のキャラクター設定と配役について。

distraction-babies 共犯者となる裕也は、寡黙な泰良に対し、饒舌な狂言回し。ひとりだと非力なのに、泰良という“虎の威”を借りることで調子に乗って暴力衝動をエスカレートさせていく。菅田将暉くんは『そこのみにて光輝く』(14年/監督:呉 美保)でその実力に痺れていたので、彼の芝居の引き出しでもやったことがないことをやろうと企んで、実現してくれました。衣装合わせの時に時間をもらって、10代中頃で何を考えてたのかなど話しました。性格的に歪んでいる裕也を演じる手がかりを探していたのが印象に残ってます。

distraction-babies 那奈はそんな裕也と対になる存在で、裕也が口達者なら那奈は視線が重要でした。事件に巻き込まれながらしたたかな面もあるが、基本的にはその時の気分に流されて生きているような、どこにでもいる女の子。小松菜奈さんは『渇き。』(14年/監督:中島哲也)で、熟練の俳優の中に放り込まれた彼女の違和感には魅力が溢れ出ていて、かけがえのないものだと思いました。那奈という役も脚本の想定を越えて、演じた彼女自身の持ち味が作り上げた部分も多いと思います。

distraction-babies 泰良の弟・将太は泰良を最も身近で見てきた存在であり、突然、姿を消した兄を探し求める。田舎の港町で何をどうするかも分かっていない思春期に、圧倒的な兄と対比となる存在です。ぼくはこの企画を2014年のカンヌ国際映画祭に紹介してきて、村上虹郎くんは『2つ目の窓』(14年/監督:河瀬直美)の主演としてカンヌに出品されていたので、現地のパーティの席で出会いました。まだ演じた姿が観客に見られる前だった彼に、思春期らしい危うさと同時に役者としての意思を感じて、柳楽優弥と村上虹郎が兄弟だったら最高だなって。

 またその兄弟の親代わりともいえる造船所の親父・近藤役のでんでんさん。社会のグレイな部分を担う役柄ですが、こちらから多くを話さずとも理解してくれて、撮影時も実際に現地の方々と交流しながら、立ち振舞いなどを芝居に生かしてくれました。
 とにかく端役に至るまで、語りだしたらキリがありません。この映画で自信をもって言えるのは役者がみんな素晴らしい。僕の希望していた理想のキャストが集まってくれました。


本作で描いた暴力について。

 もしかしたらこの映画を観て、暴力を肯定していると勘違いされるかもしれません。泰良の台詞は最小限まで削ぎ落として、数少ない言葉の中で核になるのが「楽しければええけん」。この言葉に違和感を抱く人も多いかもしれませんが、僕も取材で耳にしたその言葉に違和感を覚えたからこそ映画を撮りました。たとえば暴力行為をみて、嫌悪感とともに高揚感を抱くのも事実で、この罪深い感触と向き合いたいと思いました。
 今回、松山で喧嘩の取材と並行して感銘を受けていたのが、愛媛各地で取り行われる神輿をぶつけう秋祭りです。喧嘩神輿と呼ばれて各地でその考え方は異なりますが、三津でいえば、かつて農民と漁師の揉め事が絶えなかったので一年に一度だけ神輿をぶつけ合い豊穣を願う儀式だと聞きました。ぶつけ合う神輿の下で人々が怒鳴り合って押し合って、殴り合いも起きますが、そこは社会であって、規則にも暗黙の了解がある。近藤はまだ未熟な将太を“こちら側”に繋ぎ止めようとするんですね。“向こう側”に行ってしまった泰良に対して。


音楽について。

 前作『NINIFUNI』を公開中に縁あって向井秀徳さんと対談をして酒を交わしました。その時点ですでに愛媛の取材をしていたので「もし映画として動き出したら音楽をお願いさせてください」と酔いに任せて口にしたところ「“ギュイーン”とした音で良ければいいよ」とお返事いただきました(笑)。
 その後、松山の撮影直前でしたが向井さんに音楽をお願いしたところ、細かいことまで話さずとも快くお返事をいただきました。その場ですぐに脚本を送って、松山での撮影を終えてから東京に戻ると、向井さんが脚本を読んだ印象で音楽が送られてきました。結果的にこの時いただいた楽曲はこの映画を象徴している音楽として冒頭部分で使うことになりました。その後、本編が出来上がる前に2人のジャズ・ミュージシャンと向井さんがコラボレーションした楽曲もいただき、エンディング曲の「約束」は映画の編集を終えた時に作ってくれました。ぼくがナンバーガールをはじめ、現在までの向井さんの音楽の世界観に影響を受けているのは間違いないので、もはや映画に合ってるとか間違ってるとか飛び越えた、これ以上ないものになっていると思ってます。


映画を観ていただく方々へのメッセージを。

 縁も所縁もなかった松山で、沢山の人たちと出会って脚本を書いて、これまで見てきたものとか感じたことを詰め込みました。集まったキャストやスタッフと一緒にすべてをぶつけた映画です。どこかの劇場で観た人たちが「やべえな、これ」と騒ついて、『ディストラクション・ベイビーズ』の話で盛り上がってくれたら、それほど嬉しいことはないなあと。



(オフィシャル素材提供)


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